女子バレー新戦術「Hybrid6」進化の鍵は?──眞鍋監督、木村沙織らに聞く
選手たちはどう感じ、何に取り組もうとしている?
木村 チームがどういう状況でもコンスタントにレベルの高いところで安定感のあるプレーを続けなければ。みんながつないでくれて最後に苦しいトス、二段トスが上がってくるときに、クロスに打つことが多かったんですが、リベロに取られてしまって、そこから展開されることが多かった。もっと工夫して、違うコースを抜いたり、ブロックをはじいたり、攻撃の幅を広げていきたいと考えています。 長岡 「打つことで貢献したい」と思っています。とにかく点数を取る。技術面もそうですが、確実なボールは確実に1点にする、当たり前のことを当たり前にやる、すべてそこからだと思うので。やらなきゃならないことはいっぱいありますが、一つずつクリアしていきたいと思っています。 宮下(遥) WGPはコンビに不安が残ったままやっていました。なんとなくで終わっていたところを細かく確認しています。精度を上げるため「今、自分の上げ方どうですか?」「今のこうしたほうがいいですか?」と自分から聞いたり、会話を多くして。あと、ラリー中にトスがネットに近くなる癖があるので、試合中も考えて、スパイカーに余裕があるときには、トスを呼ぶときに「離して!」と声を出してくださいとお願いしています。
攻撃をもっと分散! バックアタックを増やす
誰もがどこからでも攻撃できる、時には4、5人が助走に入り、シンクロ攻撃をしかける「ハイブリッド6」。相手ブロッカーを惑わすために必要なのが、セッターの中道瞳も一番の課題に上げる「攻撃の分散化」だ。WGPファイナルでのアタックの得点を見てみると、ロシア戦(長岡望悠13、木村13、新鍋理沙11、江畑幸子8)、トルコ戦(長岡11、石井14、木村11、大野果奈8)、中国戦(長岡16、石井10、木村11)、ベルギー戦(新鍋10、江畑9、長岡8)、ブラジル戦(石井10、木村7、新鍋5)。木村、江畑に集中したロンドン五輪と比べるとかなり分散されていた。しかし物足りないと感じたのが、バックアタックの本数だ。 ──攻撃の配分についてはどうですか? 眞鍋監督 分散化はもっとやらないと。そのために「ハイブリッド6」ですから。1人のエースアタッカーに集中しないで全員が同じくらいの本数を打つ。日本には絶対的エースがいない。それは不利ですが、全員がまんべんなく打てるというプラスでもありますから。 また、ハイブリッドでは明日だれがスタメン? ってわからない。どこのポジションに入るかさえもわからないわけです。レギュラー、控えというのがない。出られるチャンスが多いので、先発以外の選手のモチベーションも高いんですね。 誰が入るかでチームのスタイルもがらっと変わる。迫田が入れば別のチームになるし、山口(舞)や大野が入れば従来のミドルブロッカー的な攻撃で速さが増す。面白いと思いますよ。 今までとまったく違うのはメンバーチェンジ。ピンチサーバーで入れた選手をそのまま使うことができるし、6人一気に全部交代っていうのもできたりします。今、いろいろとシミュレーションしています。調子のいい選手をどんどんハイブリッドしていこうと思っています。 山口 自分がコートに入ったときには点を取ることもそうですが、トランジション(切り返し)の速さで、速攻やサイドへの速い移動攻撃でブロックを分散させて、他の人が決めやすい状況を作りたいと思います。 ──バックアタックが少なかったように見えました。もっと増えたらと思うのですが。 眞鍋監督 そうです! WGPでは少なかった。ですが、世界バレーには、迫田(さおり)というバックアタックのスペシャリストが戻ってきましたからね。迫田は世界でも他にいない、前から打つより後から打つほうが決まるアタッカーですから。迫田が入ることで、バックアタック(前衛でもバックアタックのような攻撃)の本数が増えると期待しています。相手は背の高いブロッカー陣が多いのでトスがネットに近いとブロックされやすい。バックアタックなど縦の攻撃は日本の大きな武器、もっと本数を多くして決定率・効果率も上げていきたいです。