木村多江、田辺桃子、高岡早紀、菜々緒…《エンタメ座談会》「最強の悪女女優」を決めよう!
あなたが思い浮かぶ″悪女女優″は?
FRIDAYドラマ担当編集者T 今回、「最強の悪女女優」を決めるべく、皆さんに集まっていただきました。悪女といえば、誰が思い浮かびますか? 【プロ魂炸裂】小沢真珠、菜々緒、松本まりか…ドラマを面白くする「悪女女優」の素顔写真 島田薫(芸能リポーター) 最近もっとも注目している女優の一人で、現在、『笑うマトリョーシカ』(TBS系)に出演中の田辺桃子(25)です。櫻井翔(42)が演じる政治家の学生時代の恋人という役柄ですが、彼を裏で操っているのではと思わせる所作ひとつひとつが素晴らしい。例えば、自分が居候する恋人の家で、政治家を目指す恋人とその過保護な母親を前に、タバコを吸いながら首をかしげて「変わってますよね、この親子」とふてぶてしく言ってみたり。彼女が醸し出す不気味で妖しげな雰囲気、まさに″怪演″です。回想シーンのみでの出演なので、その雰囲気は往年の大映ドラマに出てきそうな悪女になっている。 桧山珠美(コラムニスト) 田辺は『リコカツ』(TBS系)で、主人公の夫を落とすべく手料理を持って家に押しかける″筑前煮女″を好演しましたが、今回はそれを上回るインパクトですね。 『笑うマトリョーシカ』にはもう一人、″ベテラン悪女″高岡早紀(51)が出ています。しかも、ただ悪いだけではなく、男を惚れさせ、とことん利用する。 島田 高岡はプライベートでも″魔性の女″のイメージがあるから、悪女がハマりますよね。最近は本人も魔性と言われることへの抵抗がなくなったようで、’21年に『魔性ですか?』というタイトルのエッセイ集を出すなど、ポジティブに捉えるようになっています。 編集者T イメージを巧みに利用して悪女を演じる女優といえば、田中みな実(37)を忘れてはいけません。今では美のカリスマ的存在になり、多くの女性から支持されていますが、昔は「嫌いな女子アナ」ランキング上位の常連でした。 そのキャラが存分に発揮されたのが、『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)での振り切った演技。恋敵のヒロインに向けた「わたしの大切なもの、奪わないでね? そんなことしたら私……ゆるさな――い」という名セリフで、彼女は女優としての新境地を切り開きました。 島田 イメージは大事ですね。小沢真珠(まじゅ)(47)を見ると、いまだに『牡丹と薔薇』(フジテレビ系)での名セリフ「役立たずのブタ!」を思い出しますから(笑)。放送されてもう20年が経ちましたが、いまだに視聴者の心の中には悪女のイメージが残っているのでは? 桧山 菜々緒(35)も悪女のイメージが強いですね。アニメの世界から抜け出してきたかのような完璧なスタイル、そして気の強そうなルックスと雰囲気。彼女には悪女を演じるための要素が全て揃っています。一番最初に悪女を演じたのは、『ファースト・クラス』(フジ系)での腹黒いファッション誌編集者役。その次が『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジ系)での、異常かつ冷酷、凶悪かつ美しい殺人犯でした。松坂桃李(35)とヒロインの木村文乃(36)より圧倒的な存在感を残し、悪女のイメージを確立させましたね。 ◆悪女は人気女優への登竜門 編集者T 憑依型の悪女女優もいますよね。最近、僕が注目しているのは松本まりか(39)です。彼女の名を一躍有名にしたのが『ホリデイラブ』(テレ朝系)で演じた悪女・里奈でした。ヒロインの夫を奪うべく、W不倫した挙げ句、会社のロビーで大声で不倫を告白するなどの奇行を連発。この夏クールのドラマでは『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系)で夫に15年にわたり不倫され続けた、いわゆる″サレ妻″を演じています。復讐を決意し、豹変していくサマがすごい。泣き笑いしながらフォークで夫の写真を刺したり、ハサミを夫に突き立てる妄想をしたり。ハサミのシーンはホラーでしかなかった。 桧山 私は彼女が鼻水をガンガン垂らして泣くシーンに圧倒されました。とことん振り切れる面白い役者です。 松本若菜(40)も憑依型。現在は『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)で爽やかなラブコメヒロインをやっていますが、ブレイクしたのは『やんごとなき一族』(フジ系)での、土屋太鳳(29)が演じるヒロインをいじめる義姉役です。 島田 「調子に乗ってんじゃないわよ!」と詰め寄り、ヒロインをサウナ室に閉じ込めたり、誕生日のヒロインに大袈裟に「バッドバースデートゥーユー♪」と歌ったり。振り切った演技は″松本劇場″と名付けられ、登場する度に話題になりました。あの役で彼女が持っているポテンシャルが一気に爆発。女優としての転機となった。彼女の場合、悪女が似合うというより、どんな人にでもなりきれるといったほうが正確かもしれません。 桧山 W松本もそうですが、悪女役は売れっ子女優の登竜門になることが多いですね。吉岡里帆(31)が注目されたのも、『カルテット』(TBS系)での悪女役がキッカケでした。爆発的な発狂こそないものの、笑顔なのに目が笑っていないサイコパスっぽい演技がとにかく上手かった。最終話で放った「人生、チョロかった」という名セリフは、今でも多くのドラマウォッチャーの間で語り草となっています。 今田美桜(27)も悪女役で脚光をあびました。『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)で演じたツインテールが特徴の小悪魔的美女役で、ヒロインをライバル視してイジワルするのですが、”再現度が高い”と原作マンガのファンからの評価が高かった。悪役なのに「応援したい」という声が上がるほどでした。 編集者T 奈緒(29)が、出世作となった『あなたの番です』(日本テレビ系)で演じた謎の住民・尾野ちゃんも怖かった。妻のいる主人公にストーカーしたり、住人めがけてテレビを落としたり、数々の奇行を繰り返して、この話題作の中でも特別な存在感を発揮していました。 奈緒は朝ドラの『半分、青い。』でお転婆なヒロインの幼馴染みを演じていたけど、とても同じ人とは思えない怪演でした。何をやらせても上手いけど、ここ最近あまり悪女をやっていないのがもったいないですね。 桧山 『あな番』にはもう一人素晴らしい″悪女″――木村多江(53)が出ていました。住民を監禁し、ハンドミキサー片手に逃げるヒロインに襲いかかる姿は狂気そのもの。爆発的な悪役ができる一方、彼女は″薄幸女優″のイメージを活かした悪女もできる。『あなたには帰る家がある』(TBS系)では、貞淑に見えて、ウラでは男を誘惑する主婦を好演しました。中谷美紀(48)演じる主人公が木村に放った「乙女ぶりっ子おばさん」という言葉がぴったりでしたね。 島田 私はもう一人のキムラ、キムラ緑子(みどりこ)(62)も好きですね。まったく笑っていない目、常にどこかに毒を持っている感じがたまりません。登場しただけで思わず身構えてしまいます。彼女が世間的に注目されたのは、朝ドラ『ごちそうさん』でヒロインの杏(38)をイビる小姑役。ヒロインが作った料理をひっくり返したり、食べ物で汚れた床を舐めさせようとしたり。あまりの迫真の演技に、視聴者から「許せない!」との声が上がり、NHKにクレームが殺到したそうです。 ◆新世代の悪女候補たち 編集者T 朝ドラといえば、現在放送中の『虎に翼』で謎の女子学生・美佐江を演じる片岡凜(20)がすごい。一見優秀で真面目な学生ですが、得体が知れない存在。印象的だったのがヒロインに「先生は私の特別です」と言って赤い腕飾りをプレゼントしたシーン。傷害事件の犯人も同じ赤い腕飾りをつけていて、ヒロインが追及すると、突然、腕飾りを引きちぎって、「ごめんなさい。用事を思い出したので、今日は帰りますね」と礼儀正しく立ち去る……。学生がそれをやっていることで不気味さが増します。 島田 片岡はデビューしてまだ2年の若手。綺麗で上品なルックスなのに、ちょっとした表情や、目の動かし方で見事にサイコパスの雰囲気を醸し出している。ただのサイコではなく、奥深くて、わずかに悲哀も感じさせる。今後、『虎に翼』で、彼女がどんな演技を見せてくれるのかが楽しみです。 もう一人、『虎に翼』で花江役を好演している森田望智(27)も悪女役をやらせたら上手い。『恋する母たち』(TBS系)で仲里依紗(34)が演じる主婦の夫と不倫する同僚を演じた際の、「奥様は先生にふさわしいのかしら?」と悪びれもせず言ってのけた姿はインパクトがありました。映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』での、主人公を誘惑し翻弄する″オトナの女性″役もよかった。色気を纏(まと)う悪女役がとにかく上手いけど、花江のような可愛らしい役もできる。素晴らしい才能の持ち主です。 桧山 若手の″悪女″なら、私は現在『マル秘の密子さん』(日テレ系)に出演中の志田彩良(さら)(25)がイチオシです。少し意地悪なお嬢様の役で、華やかさと性格の悪さを見事に表現しています。彼女のすごさを実感したのは、ドラマ初主演となった今年1月クールの『消せない「私」――復讐の連鎖――』(日テレ系)。高校生の時に同級生に犯されて、その動画がネットで拡散され、両親まで殺される。地獄を見た主人公が復讐を開始するのですが――絶望、冷酷、鬼気迫る姿など圧巻の演技を見せてくれました。 他にも深夜ドラマで振り切った演技を見せている若手女優がいます。たとえば今クールは『どうか私より不幸でいて下さい』(日テレ系)の浅川梨奈(りな)(25)の悪女ぶりがすごい。姉から夫を奪うというベタなストーリーですが、姉の前で見せるかわいい妹の顔と、悪事を企む時の悪女の顔の使い分けが巧みです。 島田 私が化けそうだなと思ったのは田牧そら(18)。現在放送中の『スカイキャッスル』(テレ朝系)での熱演が注目を集めています。優秀な中学生が女手一つで自分を育ててくれた母親を亡くし、遺物を整理したところ、実の父親が同級生の父親であることが判明。その後、実父の家に居候することになり、感情を押し殺して大人しく振る舞うのですが、母親の写真に「お母さん、とうとうこの家に入り込んだよ」と話しかける。復讐劇が楽しみで仕方ないです。 ◆結論! 最強の悪女女優は…… 編集者T 若手ではないですが、足立梨花(31)はもっと評価されるべきだと思っています。朝ドラ『あまちゃん』でヒロインと同じアイドルグループでいじめっ子のマメりんを演じ、注目を集めました。夏クールでは『しょせん他人事ですから』(テレ東系)に、同じマンションに住むママ友をSNSで誹謗中傷する主婦役で出演。小悪党の役が多いのですが、ひとつひとつ丁寧に演じていて、本人も悪女役大歓迎と言っている珍しいタイプ。 ――と、大いに語らってきましたが、そろそろ「最強の悪女女優」を決めたいと思います。 島田 今のマイブームは田辺桃子ですが、1番を挙げるとするなら、キムラ緑子に1票。悪の中に寂しさや悲しさを含んでいるから、小さい役でも人の心を揺さぶる不思議な魅力があります。 桧山 キムラは確かに唯一無二の存在感がありますね。でも、ポテンシャルがあり、憑依することもできて、いろんなタイプの悪女を演じ分けられるという意味では、木村多江を超える悪女女優はいないと思います。 編集者T 今回の座談会で名前が挙がった女優はみんなそれぞれの良さがあり、1位を決めるのは難しいですね。個人的に、振り切った悪女演技がクセになる松本まりかが最強だと思いますが――確かに桧山さんの言うとおり、悪女としての演技の幅を考えると、木村多江が一番だと思います。「最強の悪女女優」は木村多江とさせていただきたいと思います! 『FRIDAY』2024年9月20日号より
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