逮捕に自殺……韓国大統領に繰り返される悲劇は断ち切れるか
(2)血縁・人脈を重視する社会
第二に、韓国で政府要人の不正が蔓延する背景には、血縁・人脈が重視されることがあります。そこに儒教の影響が強く加わることで、韓国社会にはタテの関係を重視する、権威主義的な特徴が濃厚です。その結果、公式のルールに基づく「法治」より、非公式の人的ネットワークに基づく「人治」に傾きがちで、それは政治的権力と経済的利益を結び付けやすくします。 この環境は、大統領自身だけでなく親族や側近にまで金銭スキャンダルが多く、さらに階級間格差が大きい韓国で市民からの反感を買いやすい温床にもなっています。しかも、汚職を理由に前任者やその周辺の責任を追求した大統領自身が、同じ理由で窮地に立たされることが目立ちます。 全斗煥、盧泰愚両氏を追い詰めた金泳三氏の場合、任期終了間近の1997年に次男が斡旋収賄の容疑で逮捕され、2年の懲役刑に処されました。金氏は回顧録でこの時期の心境を「在任中、最もつらく孤独な時間だった」と吐露しています。 金泳三氏と同様、軍政時代に野党政治家として台頭し、やはり民主化後に大統領に就任した金大中(キム・デジュン)氏(任1998~2003)の場合も、任期末の2002年に3人の息子の不正蓄財が発覚し、国民に謝罪せざるを得なくなりました。 韓国屈指の大企業である現代建設の創設者として、経済運営に力を入れた李明博大統領の場合、前政権の不正を追及する中で廬武鉉氏が自殺。革新系のハンギョレ紙が2009年に行った世論調査では、59.3パーセントの国民が「盧氏の死亡は大統領の行動の結果」と回答しています。しかし、やはり任期末の2012年、兄で国会議員の李相得氏、さらに側近があっせん収賄容疑などで逮捕されたほか、李氏自身にも私邸用土地の購入を政府に肩代わりさせた疑惑が浮上しました。 朴槿恵氏の場合にみられる縁故主義や、大統領の権威をかさに着た縁者の行動、さらに企業や各種団体がこれに簡単に応じたことは、今に始まったことではないのです。