プロアマ問わずの文学の祭典「文学フリマ」の成長続く……短歌や俳句の文芸サークル、老舗文芸誌の参加も
小説やエッセーをはじめ文学作品を展示販売する「文学フリマ東京38」が今年も東京都大田区の東京流通センターで開催され、1万2200人が訪れた。2002年に始まり、近年は短歌や俳句などの短詩サークルや出版社の出店が増えた。文学の世界で定着するとともに、交流の場として成長を続ける。(池田創)
開催22年 短歌・俳句も続々
各ブースの長机の上に、小説、旅行記、詩集などがずらりと並ぶ。表紙を大きく印刷したポスターが目を引く。5月19日の会場では、開場間もない昼過ぎの時点で、来場者の肩が触れ合うほどのにぎわいだった。
文学フリマは2000年前後に巻き起こった「純文学論争」がきっかけとなり、既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表でき、プロ・アマの垣根も取り払い、すべての人が〈文学〉の担い手となれるイベントとして構想された。文芸評論家の大塚英志さんの呼びかけで第1回は2002年に開催され、その後、規模を拡大しながら年に複数回、東京だけでなく大阪や福岡、岩手など地方でも開催されている。
「自分が〈文学〉と信じるもの」と文学を定義し、出店者が自らの手で作品を販売する。作品は小説、詩、エッセー、アニメの研究書など多岐にわたり、一般流通に乗らない自費出版の作品が多く、ここでしか手に入らない冊子もある。
出店者数は増え続けており、東京会場は、開催当初(02年)の70から、今回は1878に増えた。芥川賞作家の高瀬隼子さんなど、文学フリマで出店の経験を持つプロ作家も出ている。
短歌や俳句に親しむ人の出店も目立ち、今回は約120の出店があった。
俳人の鴇(とき)田(た)智哉さん(55)は「書店で売っていない、思わぬ本に出会えるのが魅力です」と語る。今回は俳句同人誌「オルガン」で参加し、作品や座談会を収録した冊子を販売した。「短詩系は作品を手に取って、ぱっと見て内容や雰囲気をつかみやすいので相性がいい」と感じている。
現代俳句協会は今回初めて参加し、若手俳人の句集を中心に販売した。大石雄鬼事務局長(65)は「若い方に足をとめてもらい、完売となる本が出るなど予想以上の盛況ぶりだった」と話す。句集は書店に並ぶことが少なく、手に取ってもらえる貴重な場だという。