結成から一年のICEx『SCRAMBLE PARTY!』追加公演レポート 過ぎた時間と未来への約束が“スクランブル”した最後の一夜
目線、指先の動きまで計算され尽くしたパフォーマンス
ライトの点滅は、雨の音を表しているのか。繊細な演出に心を浸らせながら、そっと左手に登場し、椅子に座る千田に目が吸い寄せられる。当てられるスポットライトと、ムーディな音色。このツアーのために作曲されたという『listen to your heart』だ。 足を組みながら妖艶に、伸びやかに歌い上げる千田に呼応するように、右手から現れた八神が青いスポットライトのなかで、少しずつ過ぎ去っていく、取り戻せない時間を惜しむような歌声を披露。目線、指先の動き、表情まで計算された動きと、会場中の空気を一粒一粒、洗い上げるようなふたりの歌声が絶妙に混ざり合う。スポットライトに切り取られた千田と八神が、互いに向かい合いながら歌うのを見ていると、まるでそこだけ世界が切り取られたかのようだ。 とらわれた心は、そのまま『COUNT DOWN』『ナイトフライト』そして『Destiny』と、綿密に組み上げられたセットリストに持っていかれる。 再び水の音に包まれた舞台上には、トレンチコートに黒いハットを合わせたメンバーたちの姿が。黒と白が融合したような世界で、明滅する光に合わせて音が跳ねる。身体が躍動する。すでに期待値はメーターを振り切っているのに、彼らはさらに、どんな景色を見せてくれるのだろう。否応なしに高まる鼓動を抱えたまま、『COUNT DOWN』を知らせる「3、2……3、2、1」の囁きが耳に届く。 中村の妖艶なダンスが映える。千田が高らかに歌い上げ、山本の柔らかい声がそれを受ける。トレンチコートとハットを効果的に使った演出は、彼らのちょっと大人な表情を見せてくれる。続く『ナイトフライト』のセクシーな振り付けに合わせ、トレンチコートは客席に放たれた。中村と阿久根の、互いの胸を叩き合う振り付けに会場が沸き、COOLerの合唱にも力が入る。ピンク、ブルー、レッド……次々と色合いを変えるライトは、あらゆる角度からメンバーの表情を暴いていく。 八神の「今ここにいるみんなと、今ここで出会えていることは、奇跡ではなくDestiny」の合図で、背景の巨大モニターには空の映像が映し出される。客席に向かって一列に並び、真摯に、誠実に声を合わせて歌う彼らは、きっと過ぎ去った1年に想いを寄せていた。 ここまでメンバー同士が手を取り合い、突き進んできた時間。そして、これからも共通の目標に向けて飛び立っていくこと。さらには、メンバーやCOOLerと出会った運命について、繰り返し歌う。メンバーが繋ぎ合わせた手から、志賀と阿久根が覗き込むように歌声を響かせ、八神、中村、千田、そして竹野の声が混じり合う。これからも、ともに走っていくことを約束してくれる歌だ。明日の晴れ渡った空を期待させる、厳かな鐘の音が鳴り響く。