映画監督、アン・リー「本物の米国人でも、中国人でもない」自意識が磨いた本質を捉える〝アウトサイダーの眼〟
そしてその活躍を、台湾屈指の名門高の校長だった厳格な父は黙って見守っていた。「父が何も言わなかったのはプロだと認めてくれたから。それが最高の賛辞だった」と振り返る。
洋の東西を越える作品づくりの起源は、中国出身の両親の下、日本家屋の教員宿舎で、英語に親しんで育った環境にある。異文化を理解する一方、「本物の米国人でも、本物の中国人でもない」と語る自意識が、アウトサイダーとして「本質を捉える眼」を磨いた。
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」では3D作品に挑戦した。映画界は新技術が次々と登場し、ストリーミング配信の作品も増えた。「新しい可能性にひかれる」。映画への情熱は尽きない。
11月19日に東京都内で授賞式
■アン・リー 映画監督。1954年10月23日生まれ、70歳。台湾出身。米国を中心に活動する映画監督。洋の東西を問わず、時代の本流と向き合う人間を描く芸術性と、多くの観客を引きつける娯楽性を両立させた作品を生み出し、「ブロークバック・マウンテン」(2005年)と「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(12年)でアカデミー賞監督賞を2度受賞。ベルリン、ベネチア両国際映画祭でも最高賞を2度受賞するなど世界的な名声を得ている。
「第35回高松宮殿下記念世界文化賞」の授賞式は11月19日、東京都内で行われる。
(ペン・平田雄介/カメラ・安元雄太)