【漫画家に聞く】漫画家という職業、実際どうなの……? 「すごろく」形式でヤバい実情を描いたSNS漫画に脚光
無慈悲な打ち切りに企画のボツ……漫画家の仕事は華々しいことだけではない。そんな紆余曲折をコミカルなすごろく形式で表現したSNS漫画「漫画家すごろく」がXで注目されている。 「すごろく」をモチーフに漫画家の実情を描いた『漫画家すごろく』 作者はアニメ化された『便利屋斎藤さん、異世界に行く』を世に出すなど、職業漫画家として活動する一智和智さん(@burningblossom)。彼に本作の制作や漫画家の過酷さの実情について聞いてみた。(小池直也) ――約1.5万のいいねが集まっていますが、これについて作者ご自身としてどう捉えていますか? 一智和智(以下、一智):このくらいのボリュームで、ある程度読み応えある実録ものなら妥当な数字かなと考えてます。それなりに長い間SNS漫画やってるので何となくわかる感覚といいますか……。 ――漫画界の過酷さは本作の内容含めて色々あると思いますが、どんなところが大変なのでしょう? 一智:この5年くらいの電子書籍の普及で漫画家の仕事は飛躍的に増えましたので、今の漫画界は特に過酷ではないと感じています。他にもっと大変なお仕事はいっぱいあるはずです。 ――それについて詳しく教えてほしいです。 一智:今の漫画界は食い扶持がいっぱいあって、個人でもSNSマネタイズができるんです。要するにイージーモードなので、まったく辛くないです。10年前くらいは紙の雑誌がつぶれまくって、受け皿になるウェブ媒体もなくどこに行っても門前払いだったので……。 といってもそのころ辛かったかというとそんなには辛くはなかったです(笑)。本作は面白おかしく悲劇っぽく描いてるだけで、ずっと「漫画家楽しいな」という感じで生きてきました。 ――生成AIの台頭で漫画界はさらに過酷になると思いますか? 一智:これはなると思ってます。怖いです。 ――編集者・内田霧子氏の登場が可愛い&カラーなのはなぜでしょう? 一智:ここだけ既に描いていた別のイラスト1枚ネタなんですよ。編集者は何かあるとすぐ漫画家に都合がいいように暴露されるので大変だと思いますね。 ――特に印象的だったのが「SNS暴露チャレンジ」でした。これについては? 一智:特に理由はなく、面白いと思ったから描きました。SNS暴露はやったところでほぼ建設的な発展にはならないのでおすすめしません。しかし人間は合理的にふるまいだけでは無理なので、気が済むならやってもいいのではないでしょうか。 得るものより失うものの方が多い、ですが他人のことなんてすぐ忘れるので1回くらい醜態をさらすのもアリかなと。やっぱりおすすめはしませんけど。 ――本作自体も内情暴露的です。この漫画を描いたことで出たサイコロの目とは? 一智:この程度のらくがき漫画がネットで広まるくらいでは何も起こりません。つまりサイコロを振ったことにならない、ノーカウントだと思ってます。 ――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか? 一智:特定の人ひとりというのはないですが、今は米代恭先生の作品が気になるので追いかけてます。 ――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。 一智:特にないです。長生きしてれば、そこそこいけるんじゃないかなって思ってます。
小池直也