「会いに行けなくなったアイドル」の今 ライブ1回のチェキ収入100万円も――産業システムの「曲がり角」
AKB48が掲げた「会いに行けるアイドル」時代の曲がり角
2005年にスタートしたAKB48は、「会いに行けるアイドル」をコンセプトにして、国民的アイドルとなった。AKB48以降の15年間続いてきたアイドル産業のシステムは、新型コロナウイルスを契機に大きな潮目を迎えている。 昨年メジャーデビューしたアイドルグループ「天晴れ!原宿」のプロデューサー、カノウリョウさんは言う。 「本来のアイドルは、テレビの向こう側にいたじゃないですか。その時代がもう一回来ている状況。つまり今、アイドルには会えないんですよ。この状況が長期化すればするほど、アイドルとファンの距離は、確実に変わると思います」 カノウさんは今後、ライブ配信が活動の主流になっていかざるを得ないとみている。 「カメラを4、5台用意して、カメラマンとスイッチャーを入れて、費用が50万円ぐらい。ライブ配信の持つ可能性は、会場のキャパシティーを超えられることです。100人の会場でやっても、1000人が見ることができる。そこでマネタイズするしかない」 ライブ配信のデジタルチケットを2000円で販売した場合、250人が視聴すれば配信コストの50万円は賄える。それ以上の視聴者がいれば、黒字化の可能性があるのだ。 「普通にライブができたころは、会場に来られない人へのプロモーションとして、主催側で50万円を負担してライブを無料配信するアイドルもいたと思います。だけど今後、配信でしかライブが見られない状況が来るかもしれない。今はまだ有料配信のニーズはないと思いますが、有料配信のできる体制にしていく必要があると思います」
アイドルと1対1で特典会ができるアプリ「チェキチャ!」や、先着5人だけがメッセージ付きの写真を購入できるサービス「OnlyFive」も注目を浴びている。そうしたオンラインに活動の場を移すとなると、現在のファンを離れさせないこと、そして新規ファンを獲得することの両立が重要な課題になる。 「たとえばキャラクター化して2.5次元になって、すぐには無理でも、スパチャ(スーパーチャット。YouTubeのライブ配信の投げ銭機能)でお金を集めるとか、コンテンツに対してお金を払ってくれるファンを増やしていきたいです。みんな、家でYouTubeは見られますから。コロナが6月あたりに収束して、『会えなかったね、寂しかったね』っていうだけで終わるといいんですけどね」