【MotoGP】ペドロサってすげえ! KTM、躍進の立役者は「見えないモノが見える、”エイリアン”みたい」
2018年にMotoGPを引退したダニ・ペドロサだが、まだその存在感はとても大きい。KTMのテストライダーを務め、2023年も2回のワイルドカード参戦をこなしたペドロサは、どちらの週末でも主役のひとりとなったのだ。 ヘレスで開催されたスペインGPでは、今季から始まったスプリントレースを初体験ながらも6位。決勝レースでも7位と、その腕が錆びついていないことを証明した。 そしてミサノのサンマリノGPでは、さらなるパフォーマンスを発揮。両レースで表彰台目前の4位入賞を果たしたのだ。 チームメイトも同僚もファンも、ペドロサがいかに素晴らしいライダーであるかは知っているだろう。しかしそれでも、ペドロサは驚きを禁じ得ないパフォーマンスを見せ、素晴らしい姿勢を見せたといえる。 KTMテストチームのテクニカル・マネージャーであるエステバン・ガルシアが語るように、ペドロサはKTMが最高峰クラスの頂点を目指す最後の一歩を踏み出させるために、今もなお努力を続けているのだ。 DAZNが作製したペドロサのドキュメンタリー『Test Rider:ダニ・ペドロサ』で、ガルシアはKTMにとってペドロサがいかに有用な存在であるか、そして「彼はこの星の人間ではないから」という理由で”エイリアン”という奇妙なニックネームがつけられていることを明かした。 「ある日ショックアブソーバーのクリックを交換し、何も言わなかったのに、ダニ・ペドロサはそれを感じたというようなエピソードをいつも聞かされている」 ガルシアはペドロサの仕事ぶりについてそう語った。 「でも実際にそういう感じなんだ。たとえば、我々が新しいエンジンをテストするとき、ダニはパワーカーブを描くことができるんだ」 「エンジン部門の人たちは、ペドロサが本当にそれを正しく理解しているかどうかを確認するために、わざわざテストに来るんだ。そしてダニは紙を手に取り、パワーカーブを描くんだ」 「MotoGPでは多くの場合、電子機器によって制限されるから、どうやってそれを感じることができるのか分からない」 「彼は常に非常に繊細なライダーで、ミスを犯さない。ダニ・ペドロサはバイクのセッティングや開発に関して非常に優れていて、バイクを俊敏にし、乗りやすくするためのある種の才能を持っているんだ」 「彼の持っている天賦の才能と相まって、このスーパーバイクが生まれたんだ」 「ファクトリーでは彼のことを”エイリアン”と呼んでいる。彼はデータでは感知できないものを感じ取るんだ」 「エアロダイナミクス部門がやってきて、バイクの角度やその動きなど、ちょっと複雑でどの方向性に行ったらいいのかわからないというと、ペドロサは紙を持っていって、それぞれの局面で感じる感覚を色を変えて説明するんだ」 「そしてエンジニアたちは、コンピューターの前で何時間も費やしても思いつかないような結論をすぐに導き出すことができる」 「ダニはすべてを紙に書き出し、時間をかけて説明し、理解してもらう。それを見て、エンジニアは『君が言ったことが本当に理解できた』と言うんだ」 「この才能は、彼の身長や体格によって培われたものだと思う。幼い頃から、彼は他のタイプのスキルを身につけながら成長しなければならなかったんだ」とガルシアは結論づけた。 ドキュメンタリーの中でペドロサは、KTMのファクトリーに入ってからの仕事ぶりや、それに伴うプレッシャーについて次のように説明している。 「(KTMに加入した時)チームはとても若く、バイクは進化の過程にあった。チームがとても若かったからだ」 「最初の年の僕の仕事は、彼らに何が問題かを強調し、それをリストアップすることだった。何が優先事項なのか? は技術的な変化について話しているのではなく、彼らがどのようにキャリアに自分自身を投影していたかを話しているんだ」 「僕のアドバイスのひとつは、『落ち着いて、リストの優先順位をつけよう』というものだった。優先順位の1番を解決しない限り、優先順位の2番には進めない。その時点で少し秩序が必要だった。少し先を見通す力が必要なんだ」 「僕の仕事は、同じように先を見据えている多くの技術者やエンジニアによって補完されている。今は、誤った決断を下すとチームにダメージを与えかねないという事実も考慮しなければならないんだ」
Rubén Carballo Rosa