教育格差について語るキッズドアの渡辺由美子理事長

　野添教授は、沖縄は安全保障が生活に密接に関わっており「基地を巡る日米の不平等性を是正しようとすること自体は重要だ」と首相の姿勢を評価する。 　一方、政府与党内には日米関係の火種になるとの懸念が強く、本格的な議論を前に、専門家からは実現性を問う声も出ている。「協定のどこを、どのように変えるか具体的に話し合うべきだ。不条理に直面してきた沖縄の思いを無視すべきではない」 　　×　　× 　日米地位協定　日米安全保障条約に基づき、日本に駐留する米軍と米兵らの法的地位を定めた取り決め。日本の主権は事実上及ばず、治外法権的だとの指摘がある。１９６０年の発効後、一度も改定されず、運用改善にとどまっている。 ▽学びに公的支援、でも塾通いで格差 　「子どもに満足な量を食べさせられず体重が減り、学校の健康診断で引っかかった」。ひとり親家庭などの教育支援をする認定ＮＰＯ法人「キッズドア」（東京）が５～６月、約１８００世帯に実施したアンケートには悲痛な声が多数寄せられた。食料配布を受け取った子どもから届いた手紙にはこう書かれていた。「これでおなかいっぱい食べられます」

キッズドアが開催する無料学習会の教室＝東京都中央区

　こうした子どもの多くが諦めざるを得ないのが塾だ。中学生の子を持つ回答者の７０％が利用せず、理由の大半は「経済的負担が大きい」。自由記述には「４、５月はどうにか塾代を捻出したが、６月は払えずやめさせた」との訴えもあった。 　政府は大学など高等教育の無償化対象を段階的に拡大し、東京都や大阪府が私立を含めた高校の実質無償化に乗り出すなど、高い学費で進学を断念することがないような公的支援は進んでいる。 　しかし、困窮家庭には進学に塾通いが前提となっている現状が立ちはだかる。キッズドアの渡辺由美子（わたなべ・ゆみこ）理事長（６０）は「小学生から塾に通う子が増え、通えない困窮世帯の子と格差が生じている。『自分は頭が悪いんだ』と自己否定の気持ちを抱いてしまい、親も罪悪感に苦しんでいる」と危ぶむ。 ▽「どんな家庭環境でも、夢を描ける社会に」 　そうした小中高生らに学ぶことを諦めてほしくないと、キッズドアは首都圏と宮城県で無料の学習会を開催する。母親の背中を見て家計が苦しいことが分かり、教科書だけで受験勉強していた中３男子は「参考書を読めてうれしい」とスタッフに漏らした。ただ、無料塾の整備状況も都市部と地方の格差が大きい。

　渡辺理事長は、親で人生が決まる「親ガチャ」という言葉が子どもたちの間ではやるのが気にかかる。「どんな家庭環境でも子どもが夢を描ける社会であるべきだ。政治家はそれを実現するための方策を語ってほしい」と訴えた。 　　×　　× 　子どもの学習費　文部科学省の２０２１年度調査によると、幼稚園から高校までの授業料や学習塾代などを合わせた「学習費」は、全て公立なら総額５７４万円、全て私立は１８３８万円で、いずれも過去最高。塾代の伸びが大きかった。