協定見直しに期待と冷淡、基地と隣り合わせの沖縄 無償化の陰で広がる格差、学びの費用削る困窮家庭【衆院選2024】
衆院選が10月27日に実施される。有権者は何を思い、1票を投じるのか。 【写真】「少し残念に思うのは、6人のうち5人が女性であることだ」と発言 石破茂首相の妻佳子さんが講演した会合、終了時のあいさつで…
米軍基地と県民の生活が隣り合わせの沖縄では、米軍人らに特権的な地位を認める日米地位協定の改定を求める声が絶えない。12日の党首討論会で、協定見直しを「必ず実現したい」と表明した石破茂首相。県内では期待の一方「どうせ腰砕けになる」と、冷めた受け止めも広がる。識者は「沖縄の思いに向き合い、国民的な議論をしてほしい」と求めている。 また、高校や大学の無償化対象となる所得層が拡大する陰で、困窮家庭は学ぶこともままならない状況に追い込まれている。長引く物価高で十分な食事ができず、苦しい家計から塾や習い事といった「学校外の学び」の費用が削られる。支援に取り組む人たちは広がる教育格差に危機感を募らせる。(共同通信=吉岡駿、川嶋大介) ▽基地を巡る日米の不平等 沖縄国際大(宜野湾市)の広場に残る、1本の焦げたアカギの木。2004年8月13日、隣接する米軍普天間飛行場の大型ヘリコプターが墜落、炎上した事故で燃え残った。「基地を巡る日米の不平等性を可視化した出来事だった」。沖国大の野添文彬(のぞえ・ふみあき)教授(日本外交史)は、アカギを見上げながら語った。
事故の現場では、米軍が日本の警察や消防を締め出した。国内でありながら、捜査が制限された根拠が地位協定だ。1995年の米兵3人による少女暴行事件では、日本側は米兵の身柄を拘束できなかった。 2016年、名護市沖で輸送機オスプレイが不時着、大破した事故では、米側は海上保安庁の捜査に応じなかった。沖国大の女子学生(21)は「同じ人間なのに、米兵だけに有利な制度があるのはおかしい」と訴える。 ▽「沖縄の思い、無視しない」実現性は 首相は先月、那覇市で開かれた総裁選の演説会で、沖国大の事故に触れ「どれほど難しいかは承知しているが、運用の改善だけで事が済むとは思わない」と発言。玉城(たまき)デニー知事は今月2日「県の考えを直接説明したい」と期待感を示した。 首相は12日の党首討論会では「沖縄の思いを無視することはしない」と述べたが、改定の中身は見えず、首相就任後、持論を封印したようにも映る。宜野湾市に住む80代男性は「口だけではないか」といぶかる。