【大学野球】春秋連覇を目指す早大で陰からチームを支えている男性2人、女性1人のデータ班
「プロのアナリストになりたい」
2年生・大渡はな(中大横浜高)は中学時代、バトミントン部でプレー。もともと野球に興味があり、高校野球の観戦を通じて、団体競技にはまった。高校3年間、野球部のマネジャーを務め、大学では別の道でチームに貢献したいと考えていた。 「東京六大学の各校でアナリストが広がっているという情報を目にして、チームの勝利に直接つながる仕事がしたいと思いました」 早大には「アナリスト志望」として入部したが、女子部員であっても特別扱いはない。男子部員と一緒に毎朝、練習の準備を行った。1年秋にチームスタッフとなったが、翌年に新1年生が入部するまで約1年、グラウンド内の雑用を男子部員とともにこなしてきた。 勉強熱心である。野球データにまつわるオンラインセミナーに積極的に参加し、現役アナリストの話を聞いて回ることもあった。ゲームをたくさん見て、男子部員からは球種など、細部まで野球を学んだ。プレー経験はないが、豊富な知識を吸収し、データ化し、選手に正確な情報を落とし込む。「私ができることであれば、何でもしたい」と、要望に応えられるように、いつも万全の準備をしている。 「東京六大学の他の五大学はプログラミング等、組織として、アナリストが確立されている。私が引退するまでには、早稲田も対等できるだけの、同じレベルに引き上げたいと思います。大学卒業後は、プロのアナリストになりたい。野球に関わる仕事がしたいです」
必要とされる場所で活動
3年生・高屋敷透弥(八戸高)は今年2月、同期の大西創志学生コーチ(3年・東京・城北高)からの打診で、3人目のデータ班に加わった。指定校推薦で早大に入学。野球部では右肩を痛め、満足にプレーできなかった。 「3年生に上がるタイミングで、チームの中での立ち位置を見つけたいと思っていました。現状を打開したい思いもあり、必要とされる場所で活動したいという考えもありました」 先輩の北村、後輩の大渡からアドバイスを受けながら、練習中は動画の撮影、各種測定をサポートしながら、経験を積んでいる。 「この秋を終えれば、北村さんから引き継ぐことになりますが、毎年、進化させていきたい。選手へのフィードバックも現状はAチームが中心ですが、さらにその幅を広げていければ、と。毎年、土台づくりをした上で、学年の色をつける。早稲田のデータ班としての仕組みを、揺るぎないものにしていきたい」 すでに、秋のシーズン途中から新チームに向けた学年ミーティングを定期的に開催。活発な意見交換が行われており、スムーズに移行するための準備が着々と進行している。 今秋は明大のとの優勝決定戦まで、データ班はフル稼働。4年生・北村はやりがいを語る。 「データを通して野球を見ると、違った一面、これまで気づくことができなかった新たな発見がありました。野球への学びが、さらに大きくなった4年間でした。この春のシーズン後は主将の印出(印出太一、4年・中京大中京高)から『ナイス、データ!!』と言われ、報われた瞬間でした。この秋ですか? まだ、言われていません(苦笑)。印出はいつも、その先を見て、チームを回していますので」 すべての戦いが終わってから、感謝を口にする。WASEDAのユニフォームを着られるのは25人。メンバーを支えるスタッフなくして、一つの勝利をつかむことはできない。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール