人事官・伊藤かつら氏に聞く「挑戦」と「ロールモデル」
国家公務員の採用や育成、給与改定、勤務環境の改善といった人事制度全般を担う「人事院」。その人事院の幹部である3名の「人事官」、その一人に名前を連ねるのが、伊藤かつら氏だ。前職は、日本マイクロソフトの執行役員。日本で初めての「最高人材・組織開発責任者(CLO:Chief Learning Officer)」として、デジタル人材の育成に携わってきた。 【画像】伊藤かつら氏 そんな彼女にとっても、人事官就任は大きな挑戦だったという。クーリエ・ジャポンが主催するトークイベント「PARCOURS(パルクール)」で語ってもらったテーマ「ロールモデルが周囲にいない環境下で、新しい取り組みにどう挑戦するべきか」について、さらに深掘りして聞いた。 ──早速ですが、伊藤さんのキャリアにおける最大の「挑戦」を教えてください。 いくつもありますが、近いところから挙げると2年半前、人事院という組織に入ったことです。その前だと、11年前にマイクロソフトで役員になったとき、あとは33歳くらいで、最初にマネジャーになったときでしょうか。 特に、人事院に入ったことは大きな挑戦でした。「国規模で物事を考える」という習慣がついていなかったので。人事院が直接対象とするのは国家公務員、約30万人ですが、実際には地方公務員や他の公的組織など、もっと幅広い方たちに影響していく仕事です。そしてやはり公務なので、ステークホルダーが複雑ですよね。 さまざまなステークホルダーの、多種多様な課題意識や意見があるなかで、正解がない仕事をしていく。民間でも意思決定は簡単ではありませんでしたが、物事の複雑性をより強く感じます。 ──民間組織から公務機関に入られるのは、大きなカルチャーショックを伴うものなのでしょうか? 最初に受けたショックは、IT環境があまりに違うこと(笑)。最先端のIT業界から、それこそ「昭和的」とも言える環境を目の当たりにしたので、非常に驚いたことを覚えています。幸いこの2年で大きく環境が変わり、いまは快適に働いています。 他にも意思決定の方法とか、ステークホルダーのマネジメント方法などが違うなと感じましたが、2年半経ってみて思うのは、公務組織だからというよりは、日本の伝統的組織の特徴なんですよね。私のカルチャーショックは公務組織に来たからではなく、外資から、いわゆるJTCならぬ、「Japanese Traditional Organization」に来たショックだったのだと思っています。