【追悼・西田敏行さん】「体重何キロですか?」「ヒ・ミ・チュ」…「山田邦子」が語るNHK大河「八代将軍吉宗」共演秘話
なぜ俳優に?
山田:どうしても気になって「なんでその顔で俳優になろうと思ったんですか?」って聞いたんです。そうしたら西田さんは「だからなったんだよ」と。「こういう顔は他にいないだろ」って。「強いなぁ」としか返せませんでしたけど、私のことを同類だと思ってくれたんでしょうね。だって、西田さんを本当に間近で見ると、背も低いし短足だし、顔もブーちゃんなんですよ。それでも西田さんは、不思議とセクシーで色気がありました。ウインクしたり、口をニッと結んだまま笑ったり、肩をすぼめてみせたり、二枚目の俳優さんがやりそうな仕草をするんですが、それがサマになっていた。いい男に見えるんですね。おそらく相当モテたと思いますよ。カッコ良かった。 ――西田さんがかつて出演したドラマの話もした。 山田:私が大好きな「池中玄太」の話もしましたね。長門裕之さん演じる編集長とぶつかるシーンなんか見ていると、どこまでが脚本で、どこからが素なのかがわからなくて、本物の俳優が衝突するとこうなるのか! と衝撃でしたから。「大ファンでした」と伝えると、嬉しそうにしてました。でも、タイトルについては「“80キロ”ってなあ……」と今でも不満げで、「それはないだろ」って顔をしてました。 ――ちなみに、1980年にスタートした「池中玄太80キロ」はシリーズ化。92年に放送された“さよならスペシャル”のタイトルは「池中玄太83キロ」になっていた。 山田:「今は何キロなんですか?」と聞いたら、「ヒ・ミ・チュ」ですって。愛嬌がありましたよね。「太りすぎてジーパンが入らねえ」なんて言いつつも、体重以外のことは本当に気さくに普通に話してくださいました。
懐の深さ
――大河の話に戻そう。 山田:お紋の臨終のシーンも面白かった。だんだんと私が死んでいくので、当然、息を荒げちゃいけないんですよ。それなのに西田さんが「母上、母上。とうとうお別れですな、母上」とかってずっとアドリブで言ってくるから、私も笑ってしまって。思わず「ちょっと、静かにしてください!」とツッコんじゃいましたよ。思い出深いシーンばかりです。西田さんは台本のセリフがどうとかいうのは超越してしまっていて、「吉宗ならこうだろ!」っていうところまで辿り着いていらっしゃるように思えました。 ――西田さんとの共演は大河だけではなかった。 山田:その後も歌番組などで共演させてもらいました。西田さんは歌が大好きですから、本番前からずっと歌ってましたね。懐が深いというか、引き出しの多い方でした。怒ったところなんて見たことがない。私なんか虫の居所が悪かったり眠い時もあったりするけど、西田さんにはそういうところなかったのかなあ。 ――そんな西田さんが亡くなってしまった。 山田:まだ信じられないです。私は釣りが好きだから「釣りバカ日誌」に1回でいいから出たかったけれど、叶いませんでしたね。私たちも西田さんという偉大な存在を目にしたからには、見習って頑張っていきたいものです。 デイリー新潮編集部
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