自分の心と身体なのにコントロールできない。映画『夜明けのすべて』が示した、そのままで包摂される組織という救いのかたち
自分ではどうしようもないこともある、という前提
この映画を観て、自分の心と身体なのにコントロールできない事情を抱えた、“普通”からはみ出してしまう人たちが描かれる作品自体、珍しいように感じました。でも、現実の社会では、たくさんの人が主人公たちのように、働いたり生活する上でさまざまな支障が出るような状況に置かれているのだと思います。 この社会は、社会人ならば、大人ならば自分の心や身体はコントロールするべき、して当たり前という強固な規範で成り立っています。だから、藤沢さんや山添くんのように、それができない人ははじかれてしまう。 でも、そもそも、誰しもがどこかで、多かれ少なかれ、自分でもコントロールできない部分を抱えながら生きていると思うのです。体調不良なんて最たる例で、どれだけ気を付けたって、突然やってくる。人生は不確実で、自分ではどうにもできないことの連続です。自分の心も身体もコントロールできて当たり前、ではないのだと思います。 心や身体はコントロールできないこともある。そんな前提で、許容し合い、フォローし合い、ともに生きる。この映画はその重要性を教えてくれます。 文・構成/ヒオカ
ヒオカ