【エリザベス女王杯】「後ろに何もさせなかった」C・デムーロの手腕 スタニングローズ快勝の舞台裏
[GⅠエリザベス女王杯=2024年11月10日(日曜)3歳上牝、京都競馬場・芝外2200メートル] 【写真】頑張った!パートナーをねぎらうC・デムーロ 10日、京都競馬場で行われたGⅠエリザベス女王杯(芝外2200メートル)は、3番人気のスタニングローズ(牝5・高野)が直線入り口で先頭に立ち、そのまま押し切って優勝を果たした。勝ち時計は京都開催時のレースレコードとなる2分11秒1(良)。2022年秋華賞以来、久々に手にした2つ目のGⅠタイトルは〝名手の手綱〟抜きには語れない。
復活を演出した世界の名手
2年間勝っていなかった馬の復活。言わずもがな、その勝利を手繰り寄せたのは、今や〝世界の名手〟クリスチャン・デムーロであった。 スタートしてから多くの視線を奪ったのは出脚がつき、ポジションを取れたレガレイラだっただろうが、実はその前でクリスチャンがレースを支配していた。「レースプランはゲートが開いてからだった」と言うが、好スタートを切って4番手追走。ミドルペースの流れにしっかり折り合い、ポジションを確保した。 勝負の分かれ目は、残り600メートル付近。追い上げを図る後方勢の機先を制して、真っ先に動いたのがほかならぬスタニングローズだった。前を早々に捕らえると、そのまま勢いに乗って馬場の中心へ。「4コーナーで仕掛けたときにスッと反応してくれた」と笑顔で振り返ったように、直線入り口では早くも〝勝負あり〟。凱旋門賞2勝ジョッキーは、後ろに何もさせなかった。 昨年はエースインパクトでその凱旋門賞を制するなど、華々しい活躍を見せていたが「今年はGⅠで2着が多く、ふがいなく思っていた」。その鬱憤を晴らすかのようなビクトリーロードを自ら築いた。 もちろん、騎手だけで勝利を得られるものではない。「レースに向けて何の不満もなく送り出せた」と高野厩舎の小川陽助手が語ったように、万全の状態での出走。馬主であるサンデーレーシングの吉田俊介代表から「今週の追い切りに乗って、クリスチャンは〝勝てると思う〟と言っていた」という舞台裏が明かされたように、大一番へ向けて機は熟しに熟していた。 レース自体は今年の牝馬3冠戦線の勝ち馬(ステレンボッシュ、チェルヴィニア)がいなければ、前年覇者のブレイディヴェーグも不在。「牝馬最強馬決定戦」の趣は今や失われているが、それまで善戦続きだった18年のリスグラシュー(モレイラ)や19年のラッキーライラック(スミヨン)をこのレースで勝利に導いたのも、短期免許を取得した外国人騎手たちだった。 シンプルに言うならば、状態のいいGⅠ馬にこれ以上ないパートナーがまたがっての戴冠劇――。ワールドレベルの手綱さばきに酔いしれるのも、決して悪いことではない。
和田 慎司