阪神のドラ1馬場皐輔は伊良部級の“煙幕投手”
阪神のドラフト1位のルーキー、馬場皐輔投手(22、仙台大)が2日、沖縄・宜野座キャンプで初めてブルペンでのピッチングを披露、実戦向きのコントロールと、腕が体に隠れ、メジャーではスモーキー(煙幕)と呼ばれる好投手の特徴をアピールした。候補が8人もいる阪神の先発争いがさらに熾烈になりそうだ。 足元の“ならし”に丁寧に時間をかける。とてもルーキーとは思えぬ落ち着き。キャッチャーのすぐ後ろには金本監督が陣取り、評論家、OBらの視線を一身に集め、しかも、1球投げるごとにシャッター音がブルペンに響く。緊張して当然の舞台だったが、馬場は乱れない。 驚かされたのはキャッチャーの構えたミットがほとんど動かないことだった。前日に中日のドラフト1位、鈴木博志の剛速球を見た後だったので、ストレートの威力は見劣りしたが、“ぶれない球筋”は、馬場に軍配が。ルーキーのブルペン初日で、ここまでボールが“暴れない投手”は、あまり記憶にない。これが馬場の素養のひとつなのだろう。 39球のうち、半分は変化球で、カット、スライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブと、持ち球もすべて投げきった。 「緊張して力みがあったので、変化球でゆるめようと工夫しました」 変化球のコントロールは途上だが、器用なことはわかった。ある阪神OBは、「阪神の右で、ああいう大きなカーブを投げるピッチャーはいない。効果的だと思う」と分析した。 “007”ヤクルトの山口重幸スコアラーは、テイクバック時の腕の使い方に注目した。 「テイクバックの腕の使い方が非常に柔らかい。おそらく打者からは体に腕が隠れて見にくいのかもしれない。コントロールもいいし実戦派だと思った」 実は、これ。メジャーリーグでは、「スモーキー(煙幕)」と呼ばれる技術で、阪神では、古くは江夏豊氏、故・伊良部秀輝氏らが使った技術である。テイクバックからリリースまでの腕の使い方が柔らかいため、打者から見ると腕が体に隠れてボールの出所が見にくく、タイミングがとり辛い。体感としてボールを速く感じるのだ。故・伊良部氏は、意図的にその技術を探求していたが、馬場はフォームを固める過程で身についているのだろう。 「いつも以上に硬くなってしまいました。こんなたくさんの人に見られて投げたことがないので、緊張しました。甲子園出場時と、どちらが緊張? こっちです」。 馬場は、仙台育英高時代に同級生であるソフトバンクの上林誠知、阪神ドラフト3位の熊谷敬宥らと共に春夏で甲子園出場を果たしているが、その晴れ舞台で投げるよりも緊張したという。それでいて、その緊張感でピッチングが、一切乱れないのだからマウンド度胸はたいしたもの。プロ向きだ。