水の事故を防ぐ"ライフセーバー"、人手不足の現状と命を守るための大切なこと
海外の立場は「公務員」
実は、海外の場合は事情が違う。米国やオーストラリアなどは、ライフセーバーではなく「ライフガード」と呼ぶのだが、その立場は"公務員"なのである。ライフガードの人たちは、警察官や消防隊員と同じ、公的な雇用なのだ。年間を通して給料も保障されていて、スタッフの人数も安定的に確保されている。ボランティアに頼る日本のライフセーバーとは、そもそも立場自体が決定的に違うのである。
沖縄での新たな動き
日本ライフセービング協会によると、問題の解消に向けて、沖縄県で新たな動きがあるそうだ。沖縄は温暖な気候のため、海に入って遊ぶことができる期間が長い。4月から10月の半年間以上、場合によってはもっと長く、海で泳ぐことができる。冬の時期も海辺へ訪れる人が多いため、巡回パトロールなどライフセーバーの活躍の場も多く、そして長い。年間を通して、ライフセービングを確保する検討も始まった。日本におけるライフセーバー環境を変える突破口になるかどうか。
海水浴客の減少
一方で、ライフセーバーたちの活躍の場にも変化が起きている。海水浴をする人の数が少なくなってきて、閉鎖を余儀なくされる海水浴場も目立つようになっている。日本生産性本部の「レジャー白書」でも、40年ほど前のピーク時には3,700万人以上を数えた海水浴客の数も、コロナ禍直前には600万人台と減り、最新の調査では300万人ほどだという。レジャーの多様化、海で遊ぶことが好きな子ども自体の数が減少する少子化、そして、日焼けなどを避けたい厳しい猛暑など、様々な理由が挙げられる。
時代の波"負のスパイラル"
ライフセーバーの仕事は、本来「溺れた人を救助する」ためではなく「事故を未然に防ぐ」ためである。まずは、自分の命は自分で守ることが大切であり、日本ライフセービング協会でも、各自が溺れないようにしたり、人命救助のためAEDなど医療機器の使い方を教えたり、そんな講習会に力を入れている。しかし、海水浴場など特に子どもたちが水辺で遊ぶ機会が減り、水との触れ合いが少なくなると、水の危険や命を守ることを学ぶ場も限られるようになる。そんな"負のスパイラル"が目の前に横たわっている。 「命を守る」その延長線上に、ライフセーバーの仕事がある。日本ライフセービング協会もそんな現状を憂いながら、基本的なことを学ぶ講習会などに、是非関心を持って参加してほしいと呼びかけている。ライフセーバーの現状からも、時代の1つの断面を見ることができるようだ。 【東西南北論説風(514) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 (参考)・公益財団法人 日本ライフセービング協会「アニュアルレポート2023」 ・日本生産性本部「レジャー白書」
CBCテレビ