2024年「スニーカー、ビジカジ、革靴、サンダル、ブーツ」の各部門ベストバイを発表
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。 2024年の靴業界のキーワードは「想像以上の進化」でした。「進化」をテーマに「歩けるスニーカー」「ビジネスカジュアル」「革靴」「サンダル」「ブーツ」の各ジャンルのベストバイを紹介します。1年前とはラインナップがずらっと変わったことに我ながら驚いています。 ⇒【写真】革靴部門の第1位
【歩けるスニーカー部門】第1位オン「クラウドティルト」
スイスのオンは爆発的に愛用者が増えました。機能美のみを追求した超絶ミニマルなデザインと、それまでの超大手メーカーでも実現不可だったへたらないチューブ状のクッションが最大の魅力です。かといってアスリートのみが履ける排他的な要素もなく、なかでもクラウドティルトの特徴はオリジナルのゴム紐。忙しい生活でも一瞬で履けて、歩いても脱げません。ハイブランドのロエベもこのモデルでコラボしています。2024年のベストスニーカーでしょう。
【ビジネスカジュアル部門】第1位コールハーン「オリジナルグランドエナジーメリッド ショートウィング」
ビジネスカジュアルの頂点はなんといってもコールハーン。もっともこのモデルはABCマートとのコラボモデルで、デザイン自体は2年ほど前の「おさがり」なので価格を極限まで下げていますが、クオリティはまちがいありません。海外ではコールハーンは役職クラスがこぞってビジネスシーンやゴルフなどでも好む定番ブランド。通常は日本でも3~4万円程するのですが、全国最大チェーンのABCマートと組むことで(ただし取り扱いは大型店舗のみ)、低価格販売を実現しています。1988年から2012年までナイキ傘下で経営にテコ入れされましたが、靴底の「エア」や「ルナ」のハイテク技術を革靴と合体させることに成功。このモデルもナイキの「ルナ」テクノロジーを歩行用に進化させてものです。他のメーカーの一歩先どころか一周先を先行しています。
【革靴部門】第1位レイマー「Harper」
静岡県・焼津市に本社をかまえる2015年発足の新鋭「RAYMAR」。知る人ぞ知るメーカーで、国内で設計、生産は上海にもかかわらず、驚異的なコスパと超絶に繊細な手作業、振り子のように足なりに振った設計の木型を誇ります。代表の大石裕介氏も1990年生まれという若さ。このモデルもアッパーの革には世界最高クラスのドイツの「ワインハイマ―」を使用、ソールの仕上げも手作業という徹底ぶり。 紳士靴の本場・イギリスでもここまで手の込んだ靴であれば20万円以上はするでしょう。国産でも10万円以下ということは考えにくい。それが4万円ちょっとで手に入る秘密は、むやみに出店しないことです。今年から銀座松屋に常設されるようになりましたが、それまでは基本的にイベントのみでしか試すことができませんでした。ネットで試着するときには「アシ―レ」という独特の簡易フィッティングで木型・サイズ感を試せます。しかも無料。 私も革靴の設計に10年ほど携わっていたので、正直、手の抜き方は知っていますが、レイマーは本当に妥協がありません。でなければ、革靴マニアの間でもここまで高評価にはならなかったはず。本格靴は世界的に絶滅しつつあるので、近い未来に日本人だけでなく、いずれ世界中から注目されるでしょう。