阪神・藤浪に161球を投げさせた金本采配の是非
野村克也氏が阪神監督時代の2年目以降、新庄や今岡を報道を通じてこきおろす“ぼやき節”や目に余るような起用法で、こっぴどくバッシングしたため、彼らはそっぽを向き、チーム内にはしらけた空気が流れてチームは空中分解してしまっていた。その過去を知る三宅さんは、チーム成績が好転しないことで、金本監督が辛口のコメントで選手を斬り捨てたり、懲罰起用のようなことを続けてしまうと、ノムさん時代のような暗黒のチーム状態に陥る可能性があると警鐘を鳴らすのだ。 筆者も近鉄時代の鈴木啓示監督が、1994年7月の西武戦で、野茂英雄に191球の完投勝利を無理強いさせ、その後、肩を痛めて戦線離脱。結局、この事件が野茂のメジャー移籍を最終決断させるきっかけになった悪夢が、フラッシュバックしてしまった。藤浪は、昨年オフには肩に異常を訴えて、侍ジャパン参加を辞退したほど。まだプロ4年目の肉体は161球に耐えられるほど万全にできあがっているわけではない。肩は消耗品なのだ。中4日登板のメジャーに右に倣えの「100球至上主義」には疑問もあるが、5失点しながらの161球登板は、スポーツ医科学の面から見ても、あまりに非常識である。 そして、三宅さんは、こうも続ける。 「打線がどうしても点を取れないので、先に点をやってはいけないとピッチャーにもプレッシャーがかかる。こういうことを繰り返す中でピッチャーに根気がなくなってくる。今、大事なのは藤浪に161球を投げさせることではなく、根本からの建て直しだろう。1対1で打者を打ち取るという気迫、力で押す気持ちを藤浪に持たせることが大事。制球に気を配りすぎるため、小さくなって藤浪の良さが消えてしまっている。大谷翔平との今の差がどこにあるか考えてみればいい。このままじゃ普通のピッチャーになってしまう」 藤浪は、ここまで何度かピッチングフォームの修正などを続けながら課題の克服に対峙してきたが、その作業を繰り返す中で、本来持っている長所を見失う危険性もはらんでいるという。元中日の“レジェンド”山本昌さんも「勝てないときこそ、自分で何が原因かを考え、周りのアドバイスにも耳を傾けながら、何かを変えていかねばならない」と語っていたが、161球を無理に投げることよりも、重要なのは、首脳陣とコミュニケーションをとりながら勝てない元凶を解決することだろう。 消えた自力Vなど、今後の展開でいくらでも復活するし、最下位といえど2位とのゲーム差は3.5ゲームしかない。ここから始まる勝負の夏場で、阪神が反撃するには、藤浪の復調がカギを握ることは間違いない。その期待感が、金本監督に、この日の采配を決断させたのだろうが、繰り返すが投手にとって肩は消耗品。そして藤浪にもプライドはある。投手コーチなど周囲のスタッフが止められなかったのか? ということも含めて疑問の残る采配だった。藤浪をキーマンと考えるならば、なおのこと他に再生手法はあるはずである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)