「ルックバック」が描いた クリエーターの光と闇。「チェンソーマン」作者の衝撃作を映画化
「チェンソーマン」で知られる漫画家・藤本タツキが2021年に電子書籍サービス「少年ジャンプ+」にて発表した読み切り作品「ルックバック」が、アニメ映画化された。配信から2日たたずで400万PVを記録するなどすさまじい反響を呼び起こし、その後「このマンガがすごい!2022」オトコ編第1位にも輝いた一作。 映画化にあたり、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「風立ちぬ」等に携わった押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインを担当し、「あんのこと」や「不適切にもほどがある!」ほか出演作の公開・放送が相次ぐ河合優実と「あつい胸さわぎ」「カムイのうた」の吉田美月喜がボイスキャストを務めた。 【動画】自分より優れた才能との出会いが生む美しさと残酷さ 「ルックバック」予告編
4コマ漫画を描いている小学生2人が主人公
雪深い東北の田舎で暮らす小学4年生・藤野(河合優実)は、学年新聞で4コマ漫画を連載しており、自分の画力を誇っていた。ところがある日、不登校の同級生・京本(吉田美月喜)が描き上げた4コマ漫画を目にし、その画力の差にがくぜん。悔しさから猛特訓を開始し、少しずつ上達するも京本との差は歴然で、6年生の途中であきらめてしまう。 卒業式の日、担任から「京本に卒業証書を届けてほしい」と頼まれた藤野は、彼女と邂逅(かいこう)。自分を「先生」と崇める京本と組み、再び漫画を描き始める。ふたりの努力は実を結び、商業作家として歩み始めるが、やがて痛ましい事件が起こってしまう――。 「ルックバック」は、一言で表すならクリエーターの光と闇を描いた作品だ。特に「一人ではない」ことの功罪が美しさと残酷さの両面からつむぎ出されていく。井の中の蛙(かわず)状態だった藤野は京本の存在を知り、絶望→奮起→諦念を経験する。 周囲に褒められて「自分はナンバーワンだ」と思っていたものが、実は競合のいないオンリーワン状態だったのだと思い知り、競争原理にのみ込まれていくのだ。その結果努力して上達する展開はクリエーターとしての「成長」といえるだろうが、本作はそこに潜む「ふるい落とし」から目を背けない。