若隆景に敗れ一礼する大の里（撮影・中島郁夫）

＜大相撲秋場所＞◇12日目◇19日◇東京・両国国技館 　快進撃の足が止まった。今年夏場所以来2度目の優勝、史上最速所要9場所での大関昇進へばく進の関脇大の里（24＝二所ノ関）が、若隆景（29＝荒汐）に寄り切られて初黒星を喫した。優勝争い独走だったが、大関経験者の霧島、高安の2敗勢に1差に迫られた。大関昇進の目安、三役で直近3場所合計33勝に王手の状況に変わりないが、大の里も残り3日で試練を迎えた。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　勝機は少なくとも3度はあった。それでも勝てなかった。大の里は、もろ手突きの立ち合いから、持ち前の馬力で一気に若隆景を土俵際に押し込んだ。だが脇が甘く、もろ差しを許して後退し、最初の勝機を逃した。ズルズルと後退しながらも、体を左右に揺さぶって振りほどいた。相手の左手は土俵に触れる寸前。バランスを崩したが、畳みかけられず、2度目の勝機を逸した。直後に土俵際まで押し込みながら3度目のミス。腰高のまま圧力をかけようとしたため、再びもろ差しを許して逆転された。 　ただ支度部屋に戻った大の里は、11連勝中よりも冗舌だった。「昨日の落とし穴に今日、はまった感じ。気持ちとしてはスッキリした」。前日11日目は前頭琴勝峰に辛勝。流れや内容の悪さを感じていた。連勝中は連日、ほとんどの質問に「1日1番に集中」と答えていた。そこから一転、語彙（ごい）力豊富に。「つきものが取れたのか？」の質問に「そうですね。勝ちを拾った相撲も何番かあった。攻めの甘さがあった」と、勝っても釈然としなかった胸の内を明かした。 　師匠の二所ノ関親方（元横綱稀勢の里）は「腰が高かった。まだまだ」と、力不足と指摘した。ただ依然として単独トップで、大関昇進目安の「三役で直近3場所33勝」にはあと1勝。「攻めて負けたので。明日から集中したい」。目を覚ました大の里に、再加速の予感が漂った。【高田文太】