ナチス・ドイツに5年間占領され…130カ所もの“現場”で何が起きたのか? 蘇る80年前の“ホロコーストの記憶” 「占領都市」を採点!
〈解説〉
『それでも夜は明ける』のスティーヴ・マックイーン監督が、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが5年間にわたって占領したオランダの大都市アムステルダムを描いたドキュメンタリー大作。原作は、監督の妻で歴史家のビアンカ・スティグターによる著書『Atlas of an Occupied City(Amsterdam 1940-1945)』(2019/未邦訳)。 アーカイブ資料やインタビューによる回想はあえて使用せず、現在の街並みを35ミリフィルムで撮影。広場や通り、美術館や劇場、市民が暮らす住宅など、130カ所もの“現場”が映し出される。そして、約80年前にその場所で何が起きたのかを淡々としたナレーションで解説することで、現代と地続きの恐怖としてホロコーストの記憶を蘇らせる。251分。 中野翠(コラムニスト)★★★★☆現在のアムステルダムの街並の清潔感。そこにナチス占領下の記憶を重ね合わせるというチカラ技。案外、ダレる事なく。 芝山幹郎(翻訳家)★★★★☆終映後、地図に印をつけたくなる作品。あの街に潜む翳りの遠因が見えてくる。坦々とした流れだが、周到で綿密な編集。 斎藤綾子(作家)★★★★★八十数年前の出来事を、こう綴るとは。記憶にある様々なユダヤ人迫害の映画が頭に浮かび占領の無情さが深く刺さる。 森直人(映画評論家)★★★★☆風景と時間の層から浮かぶ歴史の残響に耳を澄まして眼を凝らす。設計術は『関心領域』にも近い。ナレーションが秀逸。 洞口依子(女優)★★★★☆地理と歴史をナレーションで縫合させ再生する手法はインスタレーションアートに近い。でも映画で表現した才能に拍手。 INFORMATIONアイコン占領都市(英、オランダ、米) 12月27日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか全国公開 https://transformer.co.jp/m/senryotoshi/
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年12月26日号
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