「毎年12兆円も損失が出ると言われるが⋯」デジタル“2025年の崖”は本当なのか 専門家が徹底検証
本当に、来年から毎年12兆円の経済的損失が発生するのならば、これはかなり深刻な事態です。 それぞれの企業に対する負のインパクトも少なくないでしょうから、対応策を準備することが必要になるかもしれません。 ここは、違和感の確認(あるいは解消)、対応の要不要の判断のためにも、12兆円の経済的損失の算定を押さえておくことにしましょう。 まず、この12兆円の算定では、「稼働から21年以上を経過したレガシーシステムでは、システム障害が発生しやすい」という考えをベースにしています。つまり、以下の計算式となります。
システム障害による損害総額 =「A:システム障害による国内全体での損失額」 ×「B:(システム障害のうち)レガシーシステムに起因する割合」 ×「C:2025年時点でのレガシーシステムの増加率」 「A:システム障害による国内全体の損失額」は、EMC社(現在はデル・テクノロジーズ社)が2015年に実施した調査(「EMC Global Data Protection Index」)が用いられており、そこでは5兆円弱(4兆9500億円)とされています(詳細については後述します)。
「B:(システム障害のうち)レガシーシステムに起因する割合」は、日経コンピュータ誌の調査(2017年)が用いられています。レガシーシステム(多くは基幹系システム)に起因するのは、約8割とされています。 「C:2025年時点でのレガシーシステムの増加率」は、「企業IT動向調査報告書2016」(日本情報システム・ユーザー協会)が用いられています。2015年の調査時点では「最も大きなシステム」(≒基幹系システム)で21年以上稼働している企業の割合は20%、11~21年稼働している企業の割合は40%でした。
もし「このままの状態で」10年が経過すれば、2025年には、21年以上稼働している割合は60%(20%+40%)になりますので、3倍の増加率というわけです。 以上から「A:5兆円」×「B:8割」×「C:3倍」=12兆円/年、となるわけです。 ■「インパクトを狙った盛りすぎた数字」か? この算定を見て、みなさんいろいろと気になる点はあるかとは思います。 最も気になるのは「A:システム障害による国内全体での損失額」の5兆円弱という数値でしょう。