悔しさだけを突き付けられた異国の地で定めた決意。FC東京U-18MF永野修都は世界と再会するその日までバージョンアップし続ける
[6.30 プレミアリーグEAST第10節 FC東京U-18 2-1 大宮U18 東京ガス武蔵野苑多目的グラウンド(人工芝)] 【写真】「マジで美人」「可愛すぎてカード出る」現地観戦した女子アナに称賛集まる 思い描いていたような日常を過ごせなかった後悔や、もっとピッチで体感したかった世界への心残りは、すべて2023年に置いてきた。去年は去年。今年は今年。改めて自分の力を周囲に認めさせるパフォーマンスを披露し続けて、この世界で突き抜けてやる。 「今年はU-18でプレーできるラストの年でもあるので、1年生からずっと試合に出させてもらっている身としては、チームを引っ張っていって、勝利に導かなくてはいけないと思っていますし、自分がチームを勝たせるぐらいの気持ちで1試合1試合に挑んで、1試合1試合勝ちを積み重ねられるようにしたいと思います」。 青赤のアカデミーが丁寧に育んできた、規格外のスケールを誇るフットボーラー。FC東京U-18(東京)を牽引する特別な才能。MF永野修都(3年=FC東京U-15深川出身)は不退転の覚悟を携えて、2024年の1年間に身を投じている。 「結構こっちがチャンスを作れている中で決め切れずに、ちょっと嫌な雰囲気はあったんですけど、最終的にしっかり勝ち切れましたし、久々に勝利できたところは良かったかなと思います」。 終わったばかりの試合を振り返りながら、永野は安堵の表情を浮かべた。プレミアリーグEAST第10節。大宮アルディージャU18(埼玉)と対峙した一戦は、試合終盤にMF菅原悠太(2年)が決勝点を叩き出し、チームは連敗を2でストップさせる。 トップチームの活動に参加する際はセンターバックを務めることもあるが、今季のU-18での主戦場はボランチ。「ビルドアップの部分では自分が中心となって組み立てて、自分からチャンスに繋げるという部分を意識していますし、守備でもしっかり自分のところで球際で取り切ったり、インターセプトを狙ったり、後ろの選手や前の選手に声を掛けながら、しっかりチームでまとまって守備をするということは徹底して、攻守両面で貢献できるようにというところは考えています」。攻撃でも、守備でも、極めて高い水準を自分に課している。 球際での強さは、この年代では群を抜いている。ただ、いわゆる“ガツガツ系”に分類されるタイプではない。スッと相手に寄せ切ると、一瞬でボールを刈り取り、次のプレーへとスムーズに移行。「守備で奪ってから、攻撃に繋げる」ことを常にイメージしながら、1つ1つのプレー選択を的確に行っていく。 ボランチにトライしているからこそ、より強く意識しているのは攻撃への効果的な関わり方だ。「前からも後ろからも相手が来るという、プレーを選択する際に考える時間が短いポジションではあるので、ギリギリの相手との駆け引きの中で、どれだけ相手の怖いところにパスを出せるかが求められる部分かなって。できるだけ相手の嫌なところにパスを出せるようにというのは練習から考えていますし、そこはもっとやっていかないといけないなと思います」。 もともと攻めることは嫌いではない。むしろ行けるのであれば、どんどん前に出ていきたいタイプだ。「ボランチでのプレーは攻撃にも直結しますし、ボールにもガツッと行けるので、そういう楽しさはありますね。今日もミドルシュートやコーナーからもチャンスはあったので、点を決めたかった想いはあります」。明確な数字という結果も、今まで以上に欲している様子が窺える。 「自分としても高校2年生は大きく成長していく時期だと思っていたんですけど、いろいろな焦りもあって、ケガで1年間の大半を費やしてしまった部分はあったので、そういった意味では悔しい1年でした」。自身でもそう振り返ったように、2023年の永野は負傷に泣かされる時間がとにかく長かった。 とりわけ悔しさを突き付けられたのは、昨年11月にインドネシアで開催されたU-17ワールドカップ。主力の1人として臨むはずだったこの大会は、負傷の影響で直前までメンバー入りも危ぶまれていた中で、何とか21人の枠には滑り込んだものの、自身のパフォーマンスには大きなもどかしさを感じていたという。 「本当に大会の期間はメチャクチャ悔しくて、初戦の45分に出られたことはプラスではあるんですけど、結局自分の力が足りずに、そのあとはグループリーグもトーナメントも1分も出場することができなくて、本当に、本当に、悔しい経験でした」。 印象的だったのはスペインに敗れたラウンド16の試合終了直後の光景。チームの敗戦をベンチから見守ることしかできなかった永野は、押し寄せてくる感情を抑え切れず、大粒の涙を流していた。 「1年半ぐらい一緒にプレーしていた仲間との最後に、試合に出て関われなかったという悔しさだったり、自分の実力がまだ全然足りていないという現実に対して、本当に自分自身に悔しくなりましたし、もっとやらなきゃ世界にも、同じ日本代表で一緒にやっていたメンバーにも置いていかれるな、という気持ちが湧いてきました」。 「ただ、ケガでギリギリまでコンディションが良くなかったにも関わらず、呼んでくださった代表のスタッフの皆さんには感謝していますし、あの経験ができたかできないかは、今後の自分のサッカー人生にも関わってきますし、アレで海外に対する基準やサッカー観が変わったなとも凄く思っているので、ワールドカップを経験できたことには本当に感謝しています」。あの悔しさは絶対に忘れない。その経験をどう生かすのかは、間違いなく自分次第。異国の地で定めた決意は揺るがない。 同い年の盟友へのライバル心も、今の自分を高めてくれる大切な要素だ。既にトップチームとプロ契約を結んでいるMF佐藤龍之介の存在は、やはり意識せざるを得ない。 「もちろん尊敬している部分もありますし、目指している部分もあるんですけど、U-18に入ってから1年生、2年生とずっとチームでも代表でも一緒にやっていたのに、現時点では差ができてしまっていることは受け止めるしかないですよね。また一緒にプレーしたいですし、個人としても超えられるように、この残りのU-18での期間を全力で頑張って、トップに上がって、追い付いて、追い越せるように頑張りたいと思います」。そのためにできることを、1つずつ、1つずつ、今いる場所で突き詰めていく。 昨年はファイナルで敗れているだけに、この夏のクラブユース選手権で見据える結果は、明確すぎるぐらい明確だ。「去年も今と同じで、プレミアリーグの前期であまりうまく行っていない状況からクラブユースに入ったんですけど、暑い中でも声を出し合って、チームが一体となって、本当に良い戦いができたので、今年もクラブユースで今のチームの雰囲気も変えられるようにしたいですし、去年は準優勝という悔しい形で終わっている分、高校ラストの年では優勝したいと思います」。 うまく行かないもどかしさも、結果に恵まれない悔しさも、みんなで勝利を手にした喜びも、目標にたどり着く嬉しさも、すべての経験は、サッカー選手としての自分を形作る糧になる。18歳の夏。世界との再会を心に秘め、さらなるバージョンアップを期す永野修都から、目が離せない。 (取材・文 土屋雅史)