7月から「経営専念」を宣言したサイバーファイト高木三四郎社長に聞く、現状と今後の展望【前編】
「50歳を過ぎてからガクンといろんなものが落ちちゃったんです」
株式会社CyberFightの高木三四郎社長が、7月21日に開催するDDTプロレス両国国技館大会をもってプロレスラーを休業し、経営に専念する発表を行なった。 【動画】『THE RAMPAGE』武知海青がDDTマットで衝撃のプロレスデビュー 会見では「健康上の理由・CyberFight設立から4年・後継者育成」を休業の理由と説明を行い、「体調が良くなって、経営に専念して、後継者とかそういった部分のところも滞りなくいくようであれば、復帰したいと思います」と引退ではなく休業を宣言した高木社長に、現在の心境や、これからのDDTプロレス、ガンバレ☆プロレスの独立、東京女子プロレスの展望、『日本プロレスリング連盟(United Japan Pro-wrestling)』、プロレスラー社長についてなど、多岐にわたるインタビューを行った。(全2回のインタビュー:前編) ①休業発表後の現在・株式会社CyberFight経営専念について ―――まず本当に私達もびっくりしましたが、休業発表という形を取られました。7月の両国国技館大会後に経営に専念ということですが、まずその健康上の理由というのが一つあったと伺いました。この辺り、現在の状況はいかがですか? 高木 発表でも言ったんですけど、やっぱり定期的に検査をしてる中で、やっぱりちょっとその数値な部分であまり良くない状態がちょっといくつか見受けられると医者が言うんですね。それですぐに体が動かなくなるとかそういうようなことはないんですけど、多分このままいくと。どんどん、ちゃんと治療に専念をしなければいけないですよ的なことを、医者から言われたのがやっぱり一つありました。それと、本当に50歳を過ぎてからガクンといろんなものが落ちちゃったんですよね。 ―――同年代なので、本当によく分かります。 高木 ですよね。体調だったり、ダメージからの回復具合が遅くなったりとかしていて結構両立をすることがすごく難しくなってきて。極力、選手と同じ行動をしなきゃなというので、わりと巡業バスに乗ったりとかもしてたけど、結構そういうのも祟っちゃったのかなと思っていて。だから、今の現時点でもちょっといろいろと集中できていない、し切れていないという状態が続いてるので。だから7月に休養しますと言ったのはいいけど、じゃあ7月は誰と戦おうとか、それまでの間に誰と戦っておこうとかみたいなところが全然見えていない状況です。だからちょっと、どうしようかなと思っています。やっぱこれはちょっと本当に集中しないとまずいな、みたいなところですね。 ―――ひと区切りの7月というところはありますけど、それまでの間に状態が悪化してしまう危険性もあるかと思うので、お気をつけてください。 高木 そうですよね。 ―――高木社長が絡んでいく重要な試合というのは、やはりこれからもまだいろいろと出てくると思います。 高木 はい。 ―――トレーニングや試合後などは、だいぶ疲れが出やすくなったりしますか? 高木 そうですね。試合も疲れがやっぱり出やすくなりました。だから、いろいろなことが今は両立できてないところなんです。本当にコロナ前とか、コロナ中とかもわりと両立はできてたんですよ。本当に昨年ぐらいからガクンとやっぱりそれが落ちちゃったという感じですね。 ―――私も同年代なので、やっぱりだんだん体力の衰えや疲れの回復具合が落ちてるなというのを実感してきました。 高木 だからやっぱり、50歳半ばを過ぎたレスラーの人で、現役でも頑張っている人というのは本当にすごいなと思いますよ。鈴木みのるさんもそうだし。 ―――新日本プロレスの第3世代と呼ばれる天山広吉さんや小島聡さん、永田裕志さんもそうですね。 高木 秋山準さんもですよね。 ―――秋山さんはすごい。 高木 秋山さんはやっぱりすごいと思います。だから、やっぱそういう意味でもすごいなと思うんですけど。でも本当になんかそこがちょっと今、すごく自分の中でも困っているというかハードだなと思います。ただ、とはいえやっぱり経営にも向き合わなくちゃいけないし。あとは、やっぱり後継者を育てていかなくちゃいけないというところがあるので。でも、後継者のほうはいろいろとできてきているんですよ。だいぶ任せられるようになったので、結構そういう点ではわりと順調にいっているかなと。 ―――親会社のサイバーエージェント藤田社長も今、後継者育成にプロジェクトの着手をしているというところもあって、やっぱり同じ時代を生き抜いた経営者が、もう今はそういう発信をするようになったんだなというところで、胸に去来するものがありました。 高木 なかなかそこら辺に関しては結構大変なことですけど、でもそこに向き合わないとやっぱりできないことですね。 ―――それを思うと秋山選手なんかは、やっぱり全日本プロレス時代に社長レスラーとして苦労されていたので、DDTに来られてからは、目の輝きが戻ったなと思いました。 高木 そうですね。 ―――ある部分の肩の荷が下りて、選手活動に集中できたのが良かったのかなと思いました。 高木 そうですね。プレーヤーとしてやっぱりすごい優秀な方だと思いますし、やっぱりそっちに専念できるというか。こないだあったLIMIT BREAK(2.15後楽園ホール)も秋山選手は本当に同い年なの?というぐらいものすごい動いていたし、やっぱり輝かせていました。だから、すごいなと思いましたよね。 ―――勝負者としての厳しさみたいなものを現在も体現できるというところを、すごく強みに持っていらっしゃると思いますね。あとはやっぱり年齢的なもので、これは本当に僕らもいつどうなるかわからないんですけど、男性の更年期障害みたいなのって今すごく取り沙汰されているじゃないですか。 高木 確かに。 ―――ちょっと怖いなと思っているんですよね。 高木 そうですよ。だからそのリスクとの戦いですよね。うちは結構、家計的にそういう持病を持っている家系なんです。どっちも親二人とも大動脈瘤の手術をしているんです。だから、もともとやっぱりちょっと高血圧なんで、すごい今は気を付けていますね。 ―――病気やケガも意識しながら向き合っていくべき必要があるなというのは、すごく最近感じています。 高木 だから、そういうものはやっぱりすごく気は使っています。食べ物もそうですし、やっぱりだいぶ暴飲暴食はしなくなりましたね。 ―――経営や企画、そして選手としても体を張っている高木社長はやはり凄いです。 高木 いえいえ。 ②ガンバレ☆プロレス独立について思う事 ―――そして先日ガンバレ☆プロレスの独立が発表されました。改めて今ガンバレ☆プロレスに残るメンバーに対するお気持ちというのはいかがでしょうか? 高木 本当に言葉通りなんですけど、頑張ってほしいなという一言なんですよね。すごく今大変な時代だと思いますし、やっぱりなかなか、コロナが明けたといえどもまだ完全に戻っていないところもあったりするわけですよ。その中でやっぱりこういう決断をするというのはすごいなと思います。大家本人にとっても、ガンバレ☆プロレスというところがやっぱり住処というか。ほとんどDDTプロレスで、ユニオンプロレスにいて、ガンバレ☆プロレスは出ちゃったんですけど、彼の中でも城になっているんだなというのはやっぱり思いましたね。ただ、その城を潰しちゃいけないということで、頑張って独立をする決意したというのは、すごく彼にとっても良いことだと思うし、ガンバレ☆プロレスを支えるメンバーとか、あと三島(ガンバレ☆プロレス相談役)さん(元アイスリボン)なんかは、やっぱり大家をサポートしていきたいというところなんで、本当に恵まれているなと思いましたね。 ―――大家選手には今までとは違う経営という部分にも携わるのも、今後求められているところだと思います。そして大家選手から「けじめマッチ」という対戦要望がありました。親を倒して出て行くと発言されていますが、親の気持ちはいかがでしょうか? 高木 団体経営というのはそんな簡単なもんじゃないですよね。とはいえ、その独立はすごいことだし、決意した大家が素晴らしいなとは思うんですけども。でもやっぱり団体経営とその気持ちというのはまた違うから。やっぱりそこを大家に対しては、厳しくではないけど、一筋縄ではいかないんだよというところは、出していきたいし教えてあげたいなと思っているところですね。 ―――なるほど。 高木 本当に簡単なことじゃないので。だから、そこは身を持って体感してもらいたいなというのはありますかね。 ―――自分の城を築いてきて、自分の個性をガンバレ☆プロレスで完全に確立されたと思います。自分の信じた道を突き進んで行くガンバレ☆プロレスの皆さんを僕たちも応援したいなと思います。 高木 まずは3月17日の試合で、彼がどういう生き様をみせてくれるんだろうというところかなと思っています。自分がやっぱりDDTプロレスをやってきたという自負があるので負けるつもりもないですし、彼の前に立ちはだからなくちゃいけないとは思います。 ―――そこは社長としての矜持みたいなものを試合を通じてみせていくという感じですか? 高木 あいつに一言言いたいとすれば、やっぱり”欲”を出してほしいなと。何の欲なのかというのにもよるんですけど。やっぱり社長代表でいてなおかつ本当に組織を束ねていることだから、正直、欲がないと気持ちだけではやっていけないと思うんですよ。だから、やっぱりそこは大家本人の持つ欲望をちゃんと出していかないと、すぐ飲み込まれちゃうぞと。甘い考えだと駄目です。全員で頑張ろうとかってやっているだけじゃ無理です。だから欲を出していかないと。それが何の欲なのかというところだと思うんですよね。僕はやっぱり会社を大きくしたいとかそういう欲というのがあったので、今までやって来られたと思うんですよね。大家は何の欲を出してくれるのかなっていう。そこはすごく彼に求めたいというか、見せて欲しいなという。簡単じゃないですからね。 ―――「欲」が大事なんですね。プロレスラーとしての欲、経営者としての欲。難しい課題ですよね。 高木 そうですね。だから、やっぱりそこはすごく大事ですよ。ただ単に、団体運営していたらすぐ飲み込まれてしまうと思います。だから、それがやっぱり大家にとって必要なんじゃないかな。彼にとっては本当に、なんでプロレスをやっているのかなというのがわからないんですよ。有名になりたいのか、お金を稼ぎたいのか、女性にモテたいのかというところがみえないから、プロレス界で何かを残したいのか、やっぱりもっと曝け出したほうがいいと思います。僕はどちらかというと、このプロレス界で人々が思いつきもしないようなことを、あっと言わせるようなことを仕掛けてやろうという欲があるわけですよ。今までいろいろな形で達成してきたと思うんですよね。 ―――いっぱいやってきましたよね。 高木 だから大家健は何があるのかなと。 ―――なるほど。しかし高木社長みたいな方というのは稀有な存在ですよ。東京ドームや新幹線プロレスなんかでもすごく話題になりました。いろいろな形で世間に響くような仕掛けはすごく多かったと思いますし、やっぱりそういうことを思いつきながら実践できる人というのは、今1,000人を超えるプロレスラーの中でもまずほとんどいないですよね。またそのポジションを仮に与えられたとしても、イベンター・選手・経営者として自身をクリエイトしていく部分というのは、本当に稀有な存在だなと思います。 高木 だから一風、普通のプロレスラーの成長ストーリーとは何か違う形で成長していっているのは自分でも分かっているし、そこを逆に言うと狙っていたところもあります。だから、大家健がこれからどういう道を歩むのか。彼がよく言っている、プロレスをメジャースポーツにするんだということ。メジャースポーツをするために、どうしたいのか、どうするのかというところ。ガンバレ☆プロレスって10年ですよね。この10年間、最初は何かあったんですよ。泥水すすってでもメジャースポーツにするというのは。だから最初は、新木場の外とかでガヤガヤやりながらカリスマみを帯びてきたじゃないですか。そのカリスマがちょっと薄れてきている、ちょっと落ちてるなというのはやっぱり感じています。 ―――なるほど、やはり独立は甘くないぞと。 高木 そうですよね。だけど、そこのところがやっぱりいい人なんですよね。人によったら、それは欲がないなと思ってしまうんですよ。 ―――その部分でいうと、やっぱり欲を出してくれということですかね。 高木 そういうことですよね。 ―――すごく良いお話を伺いました。ありがとうございます。