「最近の若者は」という『若者論』がなぜ職場で全く意味をなさなくなったのか?中長期的にすべての会社が「ゆるい職場」にならざるを得ない
厚生労働省が公表している令和4年の「雇用動向調査」の結果によると、令和4年の一般労働者の離職率は11.9%、パートタイム労働者の離職率は23.1%でした。特に若手の育て方が難しいと叫ばれる中、「いままでの育て方とまったく異なる発想で育成を行う必要がある」と話すのはリクルートワークス研究所 主任研究員の古屋星斗さん。その古屋さん、「平均値で語る『若者論』の出る幕はほとんどない」とも言っていて――。 【図表】近年、大きく変わった大手企業若手社員の平均労働時間と有給休暇取得率 * * * * * * * ◆「若者がわからない」と嘆く前に理解すべきこと 「若手との接し方、どうすればよいのかわからない」 「自分が若手の頃と違いすぎる」 「若手が何も言わずに、突然『転職します』と言ってくる」 企業の管理職の方々と話して、こうした意見を聞かないことはない。 いつの時代も若者は、社会で奮闘している先達からは簡単に理解できない存在である。 ただし、現在の状況はこうした「Z世代は……」「最近の若者は……」といった「若者論」の範疇で完全に理解することができない。 その理由は2つあり、そのうちのひとつは多様化・多極化である。 多様化するキャリア志向、仕事観のなかで、管理職世代とほとんど変わらない感覚の若手も存在するし、全く違う若手もいる。何パターンあるかわからない組み合わせのなかで、平均値で語る「若者論」の出る幕はほとんどない。
◆職場の変化 もう1つ、理由がある。近年、若者側以上に職場側が変わったことだ。この職場の変化は「雰囲気や空気感が変わった」などという曖昧なものではなく、職場運営に係る法律が変わったという極めて社会的・構造的なものである。 例えば、2015年に若者雇用促進法が施行され、採用活動の際に自社の残業時間平均や有給休暇取得率、早期離職率などを公表することが義務付けられた。 2019年には働き方改革関連法により労働時間の上限規制が大企業を対象に施行された(中小企業は2020年から)。さらに2020年にはパワハラ防止法が大企業で施行された。 この動きを筆者は「職場運営法改革」と呼んでおり、2010年代中盤以降、本格化した。 結果として、例えば労働時間は減少しており、特に若手で顕著である(図表1)。 2015年の大手企業の大卒以上若手社員(入社1~3年目)では44.8時間であった平均週労働時間は2022年には42.4時間へと減少し、仮に1日あたり8時間が規定内労働時間とすれば、残業時間は週4.8時間から週2.4時間へと短期間で実に半減の水準となった。 若手の有給休暇取得率も急速に上昇している(リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2016-2023」)。有給休暇を年間50%以上取得できた者は、2015年の若手では55.0%だったものが、2022年には78.2%へと“別の国になったかのような速度で”向上しているのだ。
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