考察『光る君へ』3話 カルタで大活躍のまひろ(吉高由里子)に「すごーい!まひろさんは漢字がお得意なのね」見事な倫子(黒木華)
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)3話は「謎の男」。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか、その過程はどう描かれるのか。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載第3回です。
「わしも三男だ!!」
「来るな。俺は大丈夫だ」。 道長(柄本佑)の心の声を受け止めるまひろ(吉高由里子)。ふたりの心が既に結ばれ始めている証だろうか。道長の身元が明らかになれば、確かに彼は大丈夫だと思うが、右大臣藤原兼家(段田安則)の息子で官位もいただいている貴族をどつきながら乱暴に捕縛した放免らはきっと大丈夫ではない。 放免とは都の治安維持にあたる検非違使の、下級官吏のこと。前科者を採用していた。囚人から放免された人間だから「放免」という。2話では荷物を抱えていただけらしき人を盗賊だと殴りつけて捕まえようとしていた。当時の荒くれ者なら、盗賊を捕らえた者には褒美を出すというお触れを聞けば、冤罪であろうと捕らえてしまえという発想になってもおかしくない。 しかし同じく2話で兼家が政策提案をする前には盗賊が跋扈し、検非違使の働きが鈍い現実があったのは確かだろうし、政とは難しいものだ。 やや重たい考えを巡らしている間に、父・兼家から叱責を受ける道長の場面。 父からの厳しい言葉をのほほんと躱してゆく道長、 「私は三男ですので」 「わしも三男だ!!」 このやり取りに笑ってしまった。このドラマ、緩急というか笑いどころの挟み方が巧い。
雨夜の品定めのオマージュか
源氏物語、雨夜の品定めのオマージュのような公達たちの集い。寛いだ風情が絵のように美しい場面だった。 懐からラブレターの山を出して見せる藤原公任(町田啓太)。父は関白藤原頼忠(橋爪淳) 姉は円融帝(坂東巳之助)の中宮・遵子(中村静香)。母も嫡妻(本妻)も帝の孫という超一級の貴公子だ。くわえて和歌・漢詩・音楽の才能もあり、 小倉百人一首 滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなを聞こえけれ (滝は枯れて流れ落ちる音は随分前から聞こえないけれど、その名声は流れてきて今なお聞こえているよ) この歌を残している。 元服すると異例のスピード出世を果たした。この場面でも気の置けないふたりの友とは違う色の黒い位袍を着ている。官位が四位以上は黒、五位は緋色だ。 ドラマでは中身が町田啓太。そりゃおモテになるでしょうとも……。 この公任、自信満々のためか、いらん言葉が軽やかに出てしまうところがあったらしい人物。さてこの作品の彼はどうだろうか。 そして藤原斉信(金田哲)。こちらも容姿端麗、センス抜群で内裏の女性達に大変な人気者だと清少納言『枕草子』に登場する人物。なにげないやり取りにさらっと白居易の漢詩を織り込んだりして、教養がないとまずわからない会話を清少納言と楽しんだ様子が伺える。こちらもモテたでしょうねえ。左大臣家の姫君が「俺を待ってるのかも」というのも彼の普段の女性経験からして、おかしな発言ではなかったのかもしれない。お笑いコンビ・はんにゃ金田哲の見事なハマり様に拍手をする。 ドラマ内の貴公子たちは女性について言いたい放題だったが、オリジナルである源氏物語の雨夜の品定めも大概言いたい放題である。ただ、そこには紫式部の人間への深い洞察がうかがえて興味深い。源氏物語未読の方は是非お読みいただきたい名場面だ。