菊花賞を圧勝したドゥレッツァは、本当に天皇賞・春の最有力候補と言えるのか?
牡馬三冠のうち、GI菊花賞(京都・芝3000m)は長距離戦ゆえ、「時代に合わない」と長く不要論が燻っている。しかしその一方で、三冠レースで唯一秋に行なわれることから「翌年につながる」と、重要視している競馬関係者も少なくない。 【画像】美しき予想家の「フォトコレクション」 現にここ10年を見ても、キタサンブラックやタイトルホルダーなど、菊花賞の勝ち馬がその後のGI戦線で大いなる飛躍を遂げている。 その菊花賞を昨年(10月22日)、ダービー馬タスティエーラ(牡4歳)に3馬身半差をつけて圧勝したのが、ドゥレッツァ(牡4歳)。過去10年の菊花賞で2着につけた着差としては、タイトルホルダーの5馬身差に次いで大きい。 それだけに当然、ドゥレッツァにも今後のさらなる躍進が期待されている。その試金石となるのが、GI天皇賞・春(4月28日/京都・芝3200m)だ。 キタサンブラックも、タイトルホルダーも、菊花賞のあと、古馬になって最初のGI挑戦がこの天皇賞・春だった。そして、いずれも見事に勝利し、飛躍への一歩を踏み出した。 では、ドゥレッツァはどうか。 ひとつ気になるのは、年明け初戦となった前走のGII金鯱賞(3月10日/中京・芝2000m)の敗戦だ。 本番前のひと叩きと考えれば、2着という結果は上々に見える。だが、勝った馬から5馬身もの差をつけられての完敗。見せ場らしい見せ場もほとんどなかった。いかに"ひと叩き"とはいえ、この内容で「次につながる」と言えるのだろうか。 関西競馬専門紙記者は、その点についてこう語る。 「菊花賞のあと、レースの反動が思いのほか大きくて、そこから回復に手間取ったという事情があるようです。おそらく金鯱賞当時も、その影響がいくらか残っていたのではないでしょうか。そのうえでの2着ですから、そう悲観することはないと思います」
ただし、同専門紙記者は続けて、こんな見解も示した。 「菊花賞の勝ち方が余りにも鮮やかだったので、この馬にはこの先のGI戦線での主役としての期待がかかっているかもしれませんが、あの菊花賞をよくよく分析すれば、この馬にそれほどの高い評価を与えていいものなのか。少なくとも2着馬との間に、3馬身半ほどの能力差はない、と見ています」 同専門紙記者は、ドゥレッツァが菊花賞を制した最大の要因について「競馬がうまくいった」ことだと言う。 確かにドゥレッツァは菊花賞の際、外枠からいち早く先行してハナに立ち、自分のペースに持ち込んだ。あとは、内ぴったりの経済コースを直線の勝負どころまで追走。そのまま余計なことは何もせず、レースの流れに乗ってゴール板をトップで駆け抜けた。 長距離戦では、どれだけスムーズにレースの流れに乗れるかが大事とされる。それを、レースで一番うまく実践したのが、ドゥレッツァだったというわけだ。 見方を変えれば、道中の位置取り、ペース判断等において、抜群の手腕を発揮した主戦のクリストフ・ルメール騎手の、いわゆる"ルメール・マジック"による勝利だったと言えるかもしれない。 要するに、菊花賞で見せた圧勝劇は、いくつかのプラスアルファの要素があってのこと。2着以下との3馬身半差というのも、純粋な力量差ではなかった――より簡単に言えば、菊花賞での見た目ほど、ドゥレッツァが能力的に抜きん出ているわけではない、ということだ。 気になることは、もうひとつある。"世代間の比較"である。 今年に入って、「明け4歳世代は強くない」と言われるようになった。年明けの重賞戦線において、4歳世代がほとんど結果を出せていないからだ。 皐月賞馬のソールオリエンス(牡4歳)や、ダービー馬のタスティエーラが振るわないことも、そうした声を助長させている。 ソールオリエンスは皐月賞を制したあと、ダービーで2着、菊花賞でも3着と上位争いを演じるも、古馬との初対戦となったGI有馬記念(12月24日/中山・芝2500m)では8着と完敗。4歳になってからも、GII中山記念(2月25日/中山・芝1800m)で4着、GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)でも7着に沈んだ。 タスティエーラも、皐月賞で2着、ダービーで戴冠を遂げて菊花賞でも2着と奮闘するも、上の世代との対戦となる有馬記念で6着。明け4歳初戦の大阪杯では1番人気に支持されながら、11着と惨敗を喫した。 こうした状況から、ドゥレッツァもこれら同世代に完勝したからといって、それほど高く評価していいのか、という疑問が生まれる。