改正か? 廃止か? 60年前に施行された製茶条例に揺れる静岡県
茶どころ静岡が製茶条例をめぐり揺れている。発端は県が条例の廃止を打ち出したことにある。ところがパブリックコメントは反対意見が大勢を占め、県は条例廃止案の9月県議会提出を見合わせることに。県担当者は「きちんと見極める必要がある」(茶業振興課)と話していて、今後、業界関係者などと協議を図り対応を決める方針。そもそも静岡県の製茶条例とは、どのような条例なのか? そして県はなぜ廃止を打ち出したのか?
県「多様な茶の開発が行われている現状に即していない」
静岡県の製茶条例、正式には「静岡県製茶指導取締条例」という。昭和31(1956)年4月に施行されたこの条例は、その目的について「製茶の改善指導並びに不良製茶の製造、加工及び販売を防止することにより製茶の声価を維持すること」(第1条)と定めている。 つまり、静岡県産のお茶の品質を担保する茶産地ならではの条例なのだ。しかも、理念を示したものではなく、違反業者には懲役などの罰則を科す厳しい内容だ。ただし、県によると、同条例違反での検挙実績はないとのこと。
静岡県産のお茶は、同条例で製茶が規定され品質が担保されているのだから、消費者にとっては安心安全につながり、生産者にとっては産地の品質を保障する有効な条例のように思えるが、その条例を県はなぜ廃止しようとしているのだろうか? 県お茶振興課は条例について「施行から約60年が経過しており、消費者の茶の好みの変化とともに多様な茶の開発が行われている現状に即していないなど課題が生じている。条例を廃止しても県民生活に影響を与えることはない」として廃止を打ち出した。 お茶振興課によると、特に現状に即していないのが禁止行為を定めた第4条の条文の第2項、「物料を用いて製茶を着色し、又は異物を製茶に混入すること。ただし、知事が別に定める場合においては、この限りでない」との規定。製茶時の着色、異物混入の禁止を定めた条文だ。 県によると、異物とは茶葉以外のすべての物を指し、製茶製造と加工において茶葉以外の物を入れる時は知事の許可が必要になる。過去には、量を重くみせて高く買い取らせようと、お茶の中に石を混ぜて売るなどの悪質な行為もあり、こうした条文が作られたようだ。 しかし、食品衛生法や食品表示法など食品に対する法整備が進んだ今日、条例で規定している内容は既存の法律によって対応することが可能だと県担当者は説明する。 一方で、消費者のし好に合わせて、香りづけとしてフレーバーを入れたお茶などが開発されており、条例がこうした茶製品の開発の”足かせ“になっていると指摘する。そして、条例廃止を打ち出した背景には、業界からの要望もあることを明らかにした。