<日野聡>「オーバーロード」アインズ演じて10年 さじ加減の難しさ 熱い思いで挑んだ劇場版
「オーバーロード」は、ダークな世界観が大きな魅力になっている。しかし、魅力はそれだけではない。
「一番は緻密な心理描写だと思います。会話の裏にある心の動きが緻密に練られているところがこの作品の面白いところです。表面上の行動、言動の裏に隠された本音のせめぎ合いが、さまざまなキャラクターにあって、お互いの探り合い、駆け引きが非常に面白いんですね。さらに、王道のファンタジーの格好よさ、迫力も加わってきます。シリアスであり、ギャグもあって、それがうまく絡んで進んでいくところが最初から面白いと感じていました。オーバーロードを生み出した丸山くがね先生は本当にすごいです」
日野さんが演じるアインズも「オーバーロード」の大きな魅力だ。威厳、迫力、優しさ、包容力、少し可愛らしいところ……と日野さんの演技によって、アインズは魅力的なキャラクターになっている。
「一番は、自分の家族、要するにナザリックのみんなを守る長であるということをベースに置きつつ、臣下たちに翻弄(ほんろう)される鈴木さんの要素も非常に大切なんです。彼の心の声のギャップをどう面白く表現できるかが鍵になると考えています。アインズの表現としては、あの見た目、彼の立場からくる威厳と利発さを意識しています。鈴木さんは、抱える葛藤と共にちょっとずつ鈴木さんの人格がアインズに浸食されていくようなところもあって、その変化のニュアンスも出そうと心掛けています。ただ、さじ加減が難しい。やっぱり鈴木さんの人間味によって、視聴者の方とアインズとの距離が縮まると思うので、ただの恐怖の魔王にならないようにと」
テレビアニメ第1期の収録が始まってから約10年という時を経て、感じていることもあるという。
「10年ですから、みんな、年を取りましたね(笑い)。芝居する上で、昔と比べ意識的に何かを変えて演じてるわけではないのですが、私生活の変化や年齢と芸歴も重ねてきたことによって自然に出てくる味みたいなものはあるかもしれません。最初の頃は頑張って出していたものが、自然にできるようになっているのは、みんなそうですし、自分自身も感じています。過去を振り返った時に、今だったらもうちょっとこうできたな?ということもあるのですが、あの当時ならではのよさもあります。今やろうと思ってもできないこともありますし、反省というよりは、過去の自分のベストを認めるようにしようとしています」