坂本冬美「着物を脱いでくれますか?」のオファーに「あら、なんだかちょっと恥ずかしいわ」自身最大のヒット曲の誕生秘話
圧倒的な歌唱力で、聴く人を物語の世界に引き込む、演歌歌手の坂本冬美。19歳で歌の世界に入り、デビュー曲『あばれ太鼓』が大ヒット。翌年には『祝い酒』でNHK紅白歌合戦に初出場し、通算35回目となった2023年は、JO1×BE:FIRSTを従えて『夜桜お七』を熱唱し話題になった。ジャンルを超えて活躍する坂本は、今年6月26日にカバーアルバム『想いびと』をリリース。数多くの心に染みる歌を世に送り出してきた坂本冬美のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】 ■【画像】 坂本冬美が恥ずかしいと語った貴重な写真「着物を脱いでくれますか?」のオファーに「ヤドカリが貝殻から出てきたよう」と表現 坂本冬美の最新カバーアルバム『想いびと』は、大切な人への想いをテーマに、膨大な候補曲を坂本自身が1曲1曲歌ってみて「この曲を、届けたい」と感じた10曲が収められている。そして、ジャケット写真は着物ではなく、洋服。真っ白な上着を肩にかけロングヘアーで横顔を見せる写真からは、等身大の坂本冬美が垣間見える。 「ド演歌でデビューした私が、いまこうやってお洋服を着てカバー曲を歌うきっかけを作ってくれたのは『また君に恋してる』という曲でした」 『また君に恋してる』は、‘07年から焼酎「いいちこ」のコマーシャルソングとして流れて人気になっていたビリーバンバンの楽曲。この曲をカバーしてほしいと坂本に依頼があったのは、’08年のことだった。 「どうして演歌歌手の私に、フォークソングのカバーのオファーが? と最初は戸惑ったのですが、とてもいい曲ですし、歌わせていただくことにしたんです」
『また君に恋してる』が新たな“坂本冬美”を引き出した
同年11月にオンエアがスタートすると同時に話題になり、携帯電話の着うたとして人気が沸騰。急きょ、すでにリリースが決まっていた新曲『アジアの海賊』のカップリング曲として発売され、大ヒットシングルとなった。 「レコード会社の社長さんからCDジャケットでは、着物を脱いでくれますか?と言われて、初めてラフなお洋服姿で撮影しました。歌番組にもジーンズで出演しましたが、驚かれた方も多かったみたいですね。演歌歌手・坂本冬美といえば、家に帰っても和服で日本酒しか飲まないというイメージが強かったみたいで(笑)。私自身は、普段からよく着ていたので違和感はなかったのですが、だからこその照れはありました」 ──というと? 「着物を着たら私は演歌歌手よというスイッチが入って、堂々とお客様の前に出られるんですけど、普段のスタイルのままだと、なんというか、ヤドカリが貝殻から出てきてあら、なんだかちょっと恥ずかしいわという感じ(笑)? ジーンズにパンプスを履いてステージに上がったときはドキドキして、右手と右足が同時に出ちゃうような緊張感がありましたね」 ──素の自分と、表に出る自分との境目という感じだった? 「そう、そんな感じでした。でも、これを経験したからこそ、ドレスを着て歌番組で歌うようになり……それまでもコンサートではドレスで歌うコーナーがあったんですけど、テレビではほとんどが着物で、首から上と手首から先しか出してなかったのに、ドレスで腕やデコルテまでお見せするようなりました(笑)」 『また君に恋してる』はロングセラーとなり、ファン層は一気に広がった。 「それまで私の歌に触れることがなかった方が、あの曲を通して、他の曲も聴いてみようか、コンサートにも行ってみようかと思ってくださった。いまの坂本冬美への扉を開けてくれたのが、『また君に恋してる』という曲だったと感謝しています」 坂本冬美(さかもと・ふゆみ) 1967年3月30日生まれ、和歌山県出身。‘86年、NHK『勝ち抜き歌謡天国』和歌山大会で名人となり、同番組で歌唱指導をしていた猪俣公章氏のすすめで上京。内弟子を経て’87年に『あばれ太鼓』でデビュー。‘88年、『祝い酒』でNHK紅白歌合戦に初出場。その後、RCサクセションのアルバムに参加し、’91年には、忌野清志郎、細野晴臣とロックユニットHISを結成して活動の場を大きく広げる。‘09年に発表した『また君に恋してる』は第52回日本レコード大賞で特別賞を受賞するなど、記録的なヒットとなった。今年2024年は2月21日にシングル『ほろ酔い満月』を、6月26日に最新カバーアルバム『想いびと』をリリース。 工藤菊香
工藤菊香
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