歴史的な投高打低のシーズンもいよいよ大詰め
【ベテラン記者コラム】 シーズン序盤から「投高打低」といわれてきた2024年のプロ野球もシーズン最終盤を迎え、タイトル争いの数字を見ても、それは顕著だ。 9月19日現在で、セ・リーグは、高橋宏斗(中日)の防御率1・28というすごい数字を筆頭に、防御率1点台の投手が5人も並ぶ。一方で、3割打者はサンタナ(ヤクルト)ただひとりで、日本選手にはいないという事態になっている。 本塁打もトップの村上宗隆(ヤクルト)が28本で、シーズン30本ペース。打点も岡本和真(巨人)の75がトップで、シーズン80打点ペース。村上が量産態勢に入ってきているが、それでも歴史的な投高打低の年といえる。 2リーグ制になった1950年以降、セ・リーグで3割打者が1人しかいないシーズンは59年(巨人・長嶋茂雄)、62年(阪神・藤本勝巳)、70年(巨人・王貞治)、71年(長嶋)の4度だけ。53年ぶりの事態になることが濃厚だ。 もし村上らのペースが落ちて、20本台で本塁打王になれば、28発だった1961年の長嶋茂雄(巨人)以来、63年ぶりの低い数字。70点台で打点王になれば、76打点だった1960年の藤本勝巳(阪神)以来、64年ぶりになる。80点台でも1962年王貞治(巨人)の85打点以来、62年ぶりだ。当時は、今より13試合少ない130試合制の時代である。それを考えると、今季の数字がいかに少ないかがわかる。 パ・リーグも山川穂高(ソフトバンク)が31本塁打、93打点で両部門のトップを走っているが、3割打者は近藤健介(ソフトバンク)ひとりしかいない。昨季2023年も3割打者が頓宮裕真(オリックス)ら2人だけ、本塁打王(3人)が26本、打点王(近藤)も87打点で、こちらも投高打低が続いている。 戦中や終戦直後はボールや用具も粗悪で、1リーグ時代の1942年などは3割打者がいなかった。1950年代から機械の導入もあってボールの品質が向上し、ウサギのようにとび跳ねるという意味でラビットボールとも呼ばれ、本塁打も急増した。 その反動からボールの反発係数が抑えられるようになり、投手も変化球を増やすなどして対抗。1960年代前半は極端な投高打低となり、前記のような成績になっていたという。
投手と打者の技術向上、戦術の進化、球場の変化、用具に関するルールの変更、傑出した選手の出現などで、投高打低、打高投低の時期が繰り返されてきたが、現在の状況はいつまで続くのか。(牧慈)