社説:水道耐震化 国が踏み込んだ支援を
京都府や滋賀県にも厳しい実態が改めて突きつけられた。 避難所や拠点病院、自治体の庁舎といった災害発生時に重要になる建物に接続する上水道と下水道がともに耐震化されているのは、わずか15%にとどまることが分かった。能登半島地震を受けて国土交通省が緊急点検を実施した。 都道府県別では、耐震化が最も進んでいる東京の52%に対し、香川は0%だった。京都は10%。滋賀は4%にとどまった。 能登半島地震では、避難所につながる上下水道管も破損し、断水やトイレが使用できない状況が続いた。災害対応の拠点となる建物や被災者が身を寄せる施設では、住民の健康や地域の復旧に直結する問題である。 上下水道を運営するのは自治体だが、災害対策として国はこれまで以上に踏み込んだ支援策を打ち出す必要があるのではないか。 能登半島地震などでは、水道管の継ぎ目がずれたり抜けたりしたため、接続部が外れにくい最新の管に交換することが急務となっている。 技術的に難度は高くないとされるが、問題は費用だ。特に家屋が分散する地方では水道管路が長くなり、コストも時間もかかる。完了までに数十年を要するという自治体の声もある。 水道事業は独立採算が原則で、運営に必要な費用は料金の値上げで対応する必要がある。国が事業費の25~50%を補助する制度もあるが、利用するには水道料金を全国平均以上にするなどの条件がある。物価上昇の中で、議会の同意と住民の理解を得るのは容易ではない。 それでも耐震化を先送りすべきではない。少なくとも今回の調査の対象となった防災拠点施設や、その周辺の上下水道管から対策を進めたい。 横浜市は学校などの防災拠点の上下水道管の強化とともに、防災用トイレを直接、下水管につなぎ、プールなどの水で流す仕組みを整えた。 名古屋市は上水道のマンホールから直接、取水する蛇口を付けて災害時に臨時給水所を開設できるようにしている。 人口の減少が加速する中、自治体は地域の実情を踏まえて住民に身近なインフラのメンテナンスに重心を移している。 政府も大規模な施設やインフラの新設でなく、そうした自治体への財政支援こそ求めたい。とりわけ生活インフラの防災対策は、最優先とすべきだ。