「イスラエルは戦争を早く終わらせろ。平和に戻れ。人々を殺すのをやめろ」トランプ発言の狙いと、ネタニヤフとのディール(取引)はあるのか?
バイデンの焦り
バイデン大統領は国際的NGO「ワールド・セントラル・キッチン」の職員7人が、イスラエル軍のドローン攻撃によって殺害されると、急遽ネタニヤフ首相と電話会談をし、人道支援者の安全確保、ガザへの人道支援物資の大量搬入、追加の検問所開放や、一般市民の犠牲の削減などを要求した。その上で、同大統領はネタニヤフ首相に対して、イスラエルが具体的な行動を起こさなければ、対イスラエル政策を見直すというこれまでにない強い警告を発した。 バイデン政権のイスラエルへの支援が、「無条件」から「条件付き」に変わったのだ。 さらに、バイデン大統領は4月9日に放送された米スペイン語放送局ユニビジョンのインタビューの中で、ネタニヤフ首相の対パレスチナ政策は「誤り」と批判して、停戦を求めた。 これまでもバイデン大統領は、上院外交委員会で人権擁護の立場に立って活動をしてきており、このパレスチナの戦争の惨禍を、彼は人道的な感覚として見過ごすことができなかったのは間違いない。ただ、そればかりではない。 この背景には、秋の大統領選挙で鍵を握る激戦州ミシガンで、即時停戦とイスラエルへの軍事支援削減を求める若者層とアラブ系が、バイデン大統領から離反していることがある。米ウォール・ストリート・ジャーナルの世論調査(24年3月17~24日実施)によれば、ミシガン州における支持率は、トランプ前大統領が48%、バイデン大統領が45%で、バイデン氏はトランプ氏を3ポイント下回っている。他の世論調査でも、同州においてバイデン大統領はトランプ前大統領にリードを許している。 『米大統領選挙の「天下分け目」はどこか? バイデンとトランプの激戦州争奪戦』で詳細に説明をしたが、「3+1(スリー・プラス・ワン)」のフォーメーションで戦うバイデン大統領は、ミシガン州を落とすと、再選に赤信号が灯る。同州の若者層とアラブ系が、バイデン支持に戻るか否かは、選挙結果に多大な影響を与える可能性が高く、早急な対策が求められている。ネタニヤフ首相に対する一連の発言は、バイデン大統領の焦りも混じっている。