政治資金規制法の改正、自民党案の受け止めは… 世論調査の質問作成に苦心した理由
電話で伝えるには内容が多すぎて…
法案の中身全体に対する「総合評価」が最も聞きたいとはいえ、たとえば次のような質問文で尋ねたらどうなるでしょう。 <自民党は、政治資金パーティー参加者の公表をこれまでの20万円超から10万円超に引き下げたり、政治資金収支報告書に不記載があれば議員本人も刑事罰を受ける『連座制』を導入したり、公開義務のなかった政策活動費の使い道を公開したりする政治資金改正法改正案を国会に提出しました。この法案を評価しますか。> やはり電話で伝えるには内容が多すぎるにもかかわらず、抜け道のある条件設定や他党と比べた踏み込み不足が伝わらず、法案の概要を客観的に紹介したことになりません。 中身を知る回答者ならまだいいのですが、質問文だけから連想してしまうと「連座制の導入はいいことじゃないか」などと反射的に回答する人が不当に多いように思えます。 といって、内容の紹介を一切せずに「中身の評価」を尋ねるのも乱暴なので、結局、全体評価の質問は「自民党が法案を提出した」と断ったうえで、その中身ではなく、法改正に向けた同党の「取り組み」への評価を尋ねました。 実際の質問はこうです。 <派閥の裏金問題を受けて、自民党は政治資金改正法の改正案を国会に提出しました。あなたは、政治資金規正法の改正に対する自民党の取り組みを評価しますか。評価しませんか。> ◆自民党の政治資金規正法改正に対する取り組みを… 全体=評価する29% 評価しない62% 18~29歳=評価する46% 評価しない42% 30代=評価する38% 評価しない46% 40代=評価する28% 評価しない66% 50代=評価する28% 評価しない64% 60代=評価する21% 評価しない70% 70歳以上=評価する22% 評価しない70% ※その他・答えないは省略。コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に電話をかけるRDD方式で、2024年5月18、19の両日に全国の有権者を対象に調査。固定は有権者がいると判明した854世帯から394人(回答率46%)、携帯は有権者につながった1655件のうち600人(同36%)、計994人の有効回答を得た。 結果は「評価する」が29%で、「評価しない」62%が多数でしたが、部内からは「法案内容を示さない一方で、『改正案を提出した』という要素のみを回答者に伝えたのだから、本来と比べ『評価する』にいくぶん寄った結果になっているかもしれない」との意見が出されました。 確かに年代ごとの回答を見てみると、自民党の取り組みを「評価する」との答えは、40代以上のどの世代も20%台なのに、18~29歳と30代では4割前後と高く出ています。 若い世代の自民党支持率はむしろ低めなので、「えこひいき」ということもありません。 回答者に「法案が提出された」という基本的事実を断ったうえでないと質問が唐突で、尋ねられている問題を想起しづらいとの考えからこの質問文にしましたが、年代による「政治とカネ」問題の知識や経験の差が結果に影響を与えた可能性があるかもしれないと感じています。