読んでもらえない地域情報、「東京目線」で魔窟を掘り起こせ
NHKに取り上げられるのではなく、SNSのタイムラインを埋め尽くす
田中さんは、地方からの情報発信にはまだまだやれることがたくさんあることを強調します。 「結局地方のネタとかルポはお金がかかります。島根の話は私に仕事が来るんです。可能性はあります。外の人にお金を払うよりも、地元の人がやる方がいいでしょう」 では、地方から情報を発信するための裾野をどう広げればいいのでしょうか。依光さんは、教育の重要性を語りました。 「取材の仕方を教えて、本当に掘れる人を育てる。つまり、魔窟に行く人を育てる作業をしたいなと思っています。やるべきことは結構あります。人とどう話したらいいのか、会えないのであればどうしたらいいのか。登記簿、開示請求のやり方を教えるだけでも進歩します。地方でも東京でも、そういった作業を色々な人がやれるといいですね」 開沼さんも自身が取り組んでいる「福島学カフェ」を引き合いに出して説明しました。 「今年の3月に私は『はじめての福島学』という本を出しました。でも、読まない人が世の中のマジョリティです。ですから、カフェを通じて、クイズみたいなことをやっています。本を読んでない人にも届けたいんです。そして、聞いている側が、語る側にくるところに引き上げたいです。全員がしゃべるような場をつくりたい」 裾野を広げた結果、どんな将来が待っているのか。田中さんは、「私は、NHKにとりあげられるよりも、みんなのソーシャルメディアのタイムラインが島根の情報で埋まることを目指したいです。講演では人は育ちません。ワークショップをやって、一人一人が強くなって情報を発信するようにしたい」と意気込みを語りました。 河井さんは「JCEJは、多様な人がジャーナリストの精神をもって発信できるように取り組んできました」と話していました。ジャーナリストキャンプも、2013年は福島県いわき市、2014年は高知市、今年は静岡県浜松市と、それぞれの地域の情報を掘り起こすことを大きなテーマとしてきました。果たして、地域の「魔窟」をどれだけ探しあてることができるのか。小さなところからでも、徐々に裾野を広げることが重要になってくるのでしょう。 (執筆:新志有裕、撮影:赤倉優蔵)