読んでもらえない地域情報、「東京目線」で魔窟を掘り起こせ
いきなり地域活性化を打ち出しても読まれない
ローカルジャーナリストとして、島根県を拠点に地域の取材活動に取り組んでいる田中さんも、地域の人が地域の情報を発信する力が弱いことを指摘しています。 「私は山陰中央新報を辞めて独立しましたが、地域に住んで地域のことを外に発信しています。そんなジャーナリストは他にはあまりいません。地域から外に向けて発信する機能があまりにも弱いんです。そっちを太くした方が多様な視点になります。今回のジャーナリストキャンプでいうと、『幻の戦車(http://thepage.jp/detail/20150727-00000010-wordleaf)』も『浜松餃子(http://thepage.jp/detail/20150727-00000003-wordleaf)』も、最初から地域活性化を打ち出してしまうと読んでもらえません。戦車や餃子をテーマにして伝えるから良かったのです」 では、これまでの地域からの情報発信にどんな問題があったのでしょうか。河井さんは「地方の情報は、分かっている人が、分かっている人に向けて出していたのではないか」と、情報の届く範囲が限定的になっていることを指摘しました。
開沼さんもこのような状況を認めつつ、地方と中央の位置関係をひっくり返すことのができるのではないかと問題提起しました。 「文化的には、全国紙が上で、地方紙が下という構造が残念ながらあります。そこを覆すことに萌芽があるのではないでしょうか。例えば、『スタバ』がない悲しさに対して、『スナバ』を発信することでリバース、再構築する流れが起きます」 スターバックスコーヒー(スタバ)が島根県に出店することが2012年に発表され、唯一の空白県となった鳥取県で、平井伸治・鳥取県知事が「スタバはないけど、スナバはある」と状況を逆手に取って鳥取砂丘をアピールしました。2014年には「すなば珈琲」がオープン、さらに2015年にはスタバがオープンするなど、大きな注目を集める結果になりました。このような外に向けての発信について、開沼さんは今回のキャンプの作品にも触れながら語りました。 「今回のキャンプで取り上げた『浜松餃子』の話も、その背後には地域の問題や努力の結晶というものがあるわけです。オリジナリティと新規性で、文化的に劣位に置かれている状況をどうひっくり返すのかを考えないといけないでしょう」