見えにくい障害、司法と福祉の連携を 再犯や冤罪防ぐ取り組み始まる
外見からわかりにくい精神障害や発達障害、知的障害のある人が、罪を犯したり疑われたりしたときに支えられるよう、弁護士や社会福祉士らが連携した取り組みを行う組織「札幌トラブルシューター(TS)ネット」が今夏、発足した。12日に札幌市内でキックオフのセミナーが開かれ、約140人が参加した。 【イラスト】認知症の90歳、妻を殺した動機「思いつかない」 2023年の障害者白書によると、精神障害や知的障害がある人は人口の約6%。しかし矯正統計によると、同年の新受刑者の約20%がこれらの精神診断を受けていた。 この日、講師として登壇した東京TSネット代表理事の山田恵太弁護士は、自身の経験上、何らかの障害を抱える人は「逮捕段階はもっと多く、約5割はいる」と振り返った。その半数は診断を受けておらず、本人も気づいていなかったという。 いじめや虐待など本人に被害体験があること、自尊心が低いこと、社会の制度のはざまに陥って必要な支援を受けられなかったことなどから、犯罪行為につながっていたと考えられるという。 山田弁護士は「本人や周囲が特性を理解しないと、同じ行為に至る可能性がある」と指摘。東京で先行している取り組みの現状を紹介した。 障害の特性によっては、無実でも自分を守る説明をしにくく、冤罪(えんざい)につながりかねない。滋賀県の湖東記念病院で死亡した男性への殺人罪で服役した西山美香さんは、後から軽度の知的障害と発達障害があるとわかり、警察の誘導で虚偽の自白をしていたとして再審無罪になった。 弁護士の大川拓也・札幌TSネット共同代表は「判決が出る前からの支援が重要になる」と強調した。社会福祉士の石田昭人・同共同代表は「当事者や多くの機関と顔の見える関係を作り、結びつきを徐々に増やしたい」と話した。(新谷千布美)
朝日新聞社