【懲役19年の実刑判決】元東京地検特捜部 副部長の若狭勝弁護士に聞く 今回の判決どうみる? 直接的な証拠がない中での「有罪判決」について…
テレビ信州
裁判を取材してきた県警キャップの湯本記者と、元東京地検特捜部 副部長の若狭勝弁護士と共にお伝えします。 Q懲役20年の求刑に対し直接的な証拠がない中で判決は懲役19年の実刑。どのように受け止めていますか? 若狭勝弁護士 「裁判所は今回被告人が殺人の犯人であるというのをかなり自信を持って強く認定したという印象を受けました。裁判員と裁判官今回全部で9人で裁かれている。9人の中に無罪だといいう意見を言った人が数人いれば懲役19年という判決にはなりえないと思う。そういう意味では裁判官と裁判員の中に、これは有罪であるという人がかなりの人数いたと、そのために懲役19年という求刑20年に対し1年しか短くならないくらいのかなり強気の量刑を言い渡していると思います」 湯本記者 裁判の論点について。 これまで4つのテーマで審理が進められました。 1つ目は、事件当時、丸山被告はどこにいたのか。 2つ目は不倫や借金など殺害の動機。 3つ目は現場に残された足跡などの痕跡。 4つ目は事件前後の言動⇒アリバイ工作です。 このうち、テーマ1の「所在と移動の状況」では事件当時、長野市の議員会館と塩尻市の現場の間を被告が往復していたのかが争われました。複数の防犯カメラに映った不審車両の映像や画像が法廷で出され、検察は車両のキズや凹みなどから丸山被告の車だと立証を試みていましたが、ナンバーや運転手の顔までは分かりませんでした。 この点について、裁判所は判決で「防犯カメラに映った車は限りなく被告人車両の可能性が高く、議員会館と現場を往復したとみられる」などとしました。 Qこの車両に関する裁判所の判断を若狭弁護士はどうみますか? 若狭勝弁護士 「車両について本日の有罪判決の一番の大きな根拠としたのが防犯カメラにおいて被告人が長野市から塩尻市に移動しているということを防犯カメラで認定できるということが有罪判決の大きな根拠となっていると思います。その意味において防犯カメラに映っている車が被告人の車両であるというのをかなり詳細に綿密に傷の状況などを認定したとうかがえると思います」 Q現場の状況として、弁護側が第三者の可能性と主張していた現場の足跡については、「物取り犯とするならば不可解な点が多い」と裁判所は判断しました。これについては? 若狭勝弁護士 「足跡について一番目の争点である被告人が少なくとも犯行の日時頃に長野市から塩尻市に移動しているというのは防犯カメラ上認定できると、その大前提があるがために少なくとも物取りのような状況をある意味浮かび上がらせようと被告人がしたんでしょうという認定につながっている。逆に言うと被告人車両が移動しているということが言えなければ物取りのようにみせかけたといことも若干弱く、崩れていくので、とにもかくにも1個目の争点で被告人車両が移動していたということが認定できるというのが今回の有罪判決の大きな大きな根拠になっていると思います」 12月12日、いわゆる「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の男性が亡くなった事件の裁判では直接的な証拠がなく元妻は無罪判決でした。 Q共通点は“直接的な証拠が無い”ということですが無罪と有罪で差が出たポイントは何でしょうか? 若狭勝弁護士 「ドンファン事件の場合はそもそも殺人事件だったのかあるいは被害者とされている野崎さんが自ら大量の覚せい剤を自分で飲みすぎたいわば事故死みたいなのかというそこに争点があったわけです。今回の事件は被害者の妻が殺害されたと殺人事件であるということが大前提として認められる。これは弁護人も争っていないと思う。ここに大きな違いがある大前提がちがうのでその後の状況証拠によって認定する方法とか状況証拠の量とかいうのが有罪かどうかを分けるひとつの分かれ目になっていると思う」 Q今後、もし控訴するとなればどのようなスケジュールになっていくのでしょうか? 若狭勝弁護士 「控訴控訴審においても弁護人はまさしく第一番目の争点である被告人車両が犯行日時頃、長野市から塩尻市に移動しているそれが防犯カメラに写っているとか言うこと自体それはあくまで証拠としては弱いでしょうと、ですからそこは認められなければ今回の有罪判決というのは根拠を失うでしょうということを高等裁判所において強く認定してくれということを主張していいくと思います」