クレームが殺到した名作ドラマは? ドラマ史に残る問題作(5)大河史上最低の評価も…ファンに愛される理由は?
クレームは、厄介者扱いされるのが常である。しかし「クレーム」が「要求(claim)」を語源としていることを考えると、世相を反映する世間の声とみなすこともできる。今回は、放送当時、視聴者からクレームが殺到したものの、再評価の機運が高まっている作品を5本紹介する。第5回。(文・編集部)
『平清盛』(2012、NHK総合)
演出:柴田岳志 脚本:藤本有紀 出演:松山ケンイチ、相島一之、青木崇高、阿部サダヲ、杏、井浦新、伊東四朗、宇梶剛士、遠藤憲一、岡田将生 【作品内容】 文治元年(1185年)、源頼朝の元に、仇敵である平家が壇ノ浦で滅んだとの一報がもたらされる。かつての平清盛(松山ケンイチ)を罵る御家人たちだったが、頼朝は思わず「平清盛なくして武士の世は無かった!」と叫ぶ。そして彼は、武士の世を築いた平清盛に敬意を表し、彼の人生に想いを馳せる。 【注目ポイント】 1963年の『花の生涯』以来、半世紀以上にわたり放送されてきたNHK大河ドラマ。半世紀を経た今も、『青天を衝け』(2021)や『鎌倉殿の13人』(2022)などの傑作を世に送り出しており、「あらゆる娯楽を詰め込んだ日本一の大型時代劇」という企画当初のコンセプトはしっかりと受け継がれている。 とはいえ、全ての作品が傑作扱いされたわけではなく、『武蔵 MUSASHI』(2003)や『どうする家康』(2023)など、多くの視聴者が首を傾げた作品が数多く存在するのも事実だ。中でも賛否両論を巻き起こしたのは、松山ケンイチが「平安時代のゴッドファーザー」を演じた『平清盛』だろう。 大河ドラマ50周年記念作品として制作された本作。しかし、時代考証への熱が入りすぎたのか、埃っぽい背景や身だしなみのだらしなさが散見され、兵庫県の井戸敏三知事が、「私も見たが、画面が汚い。鮮やかさのない画面ではチャンネルを回す気にならない」とNHKに改善を求める事態に発展した。 また、こういった画面作りが影響してか、全50回の平均視聴率も12.0%と、当時の史上最低を記録。主演の松山ケンイチもクランクアップ時に「真摯に作品に臨みながら最低を叩き出すことは、最高を達成することと同じように難しい」と、本気なのか皮肉なのかよくわからないコメントを発している。 とはいえ本作、物語自体の評判は悪くない。なんといっても脚本は、『ちりとてちん』(2007)や『カムカムエヴリバディ』(2021)などで知られる名脚本家、藤本有紀が手がけているのだ。 現に、2016年に『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)内で特集された大河ドラマランキングでは、2位の『独眼竜政宗』(1987)を大きく引き離し1位を獲得。放送から10年以上を経た今も、一部で熱狂的な人気を博している。 本作のあまりに斬新な絵作りは、時代を先取りしすぎていたのかもしれない。 (文・編集部)
編集部