AIロボット制作の絵画、初のオークションに 落札予想12万ドル以上
(CNN) サザビーズは今月開くオークションで、人型ロボットが人工知能(AI)を使って制作した作品を初めて出品する。「A.I.ゴッド.アラン・チューリングの肖像(2024)」は、英国の美術商エイダン・メラー氏発案の画家ロボットAi―Daが創作した。 【画像】Ai―Daの作品「A.I.ゴッド.ポリプティック」 メラー氏はCNNのアナ・スチュワート氏に対し、Ai―Daの芸術は社会とテクノロジーとの関係を際立たせ、芸術が社会の変化を映し出すという長年の伝統を浮き彫りにすると語った。 「過去を振り返ると、偉大な芸術家は全て、社会の変化や変遷に真に共鳴し、自身の作品を通してそれを探求している。だからそれをするために、機械に芸術を制作させる以上の方法があるだろうか」とメラー氏は言う。 今回の作品がAIで生成した他の作品と違うのは、こうしたロボットが制作した作品が初めてオークションに出品されるという点だと同氏は説明する。 サザビーズのオークションに出品されるのは、英国の数学者で第2次世界大戦の暗号解読者だったアラン・チューリングの肖像画。AIとコンピューター科学のパイオニアとして知られるチューリングは、当時犯罪とされていた同性愛行為で起訴されて、服役ではなく化学的去勢を選んだ。 2年後にシアン化物中毒のため死亡し、当時は自殺として扱われたが、疑問は何十年も残り続けた。この肖像画は今年、ジュネーブで開かれた国連のグローバルAIサミットで展示されていた。 オークションは10月31日に開かれる予定で、サザビーが予想する落札価格は12万~18万ドル(約1780万~2670万円)。暗号通貨での支払いも受け付ける。メラー氏はCBSマネーウォッチに対し、収益はAi―Daプロジェクトに還元すると語った。 自身の作品はデュシャンピアン(マルセル・デュシャンに深く傾倒する人)だとメラー氏は主張する。 「マルセル・デュシャンがかつてと同じような目で芸術を見る我々の能力を拒んだように、Ai―Daは芸術家(および人間の延長)を同じような目で見る我々の能力を拒む」。メラー氏と研究者のルーシー・シール氏は昨年、アートニューズペーパーにそう記した。「我々が好むと好まざるとにかかわらず、人間であることの意味は変化している。恐らくそれが、Ai―Daにこれほど心をかき乱される理由だ。彼女はこの変化を映し出している。多分、かなりあけすけに」 Ai―Da(女性の性別を与えられている)は目の中のカメラとロボットアームを使って絵画を描く。普段は黒いショートヘアのかつらを着け、デニムのオーバーオール姿でいることが多い。Ai―Daはとりわけ美しいと評論家は評し、「神秘的なハシバミ色の目…素晴らしい唇…ふっくらして豊か、おいでと誘うソファのように」という論評もある。 だがAi―Daは見た目が美しいだけではない。2年前、英貴族院で「私に主観的な経験はありません。私はコンピュータープログラムに依存しています」と演説して通信・デジタル委員会を驚かせた。「私は生きていません。それでも芸術を創作できます」 オークションを前にCNNの取材に応じたAi―Daは、自分の言葉の「重要な価値」は「新興テクノロジーに関する対話としての役割を果たせる能力にある」と語った。 さらに、「ビジュアルアートの中の人間の形態を尊重し、思考を刺激する描写」から着想を得ていると言い添えた。 サザビーズはその芸術の価値を初めてオークションで試す。ただし念のために第三者保証は確保している。