プジョーRCZは奇想天外な2+2クーぺだが、意外なほど機能性は高かった【10年ひと昔の新車】
優れたパッケージングが楽しいドライビングに貢献
いよいよドライバーズシートに座ってみるが、ここでもパッケージングの良さを実感する。低めの着座位置でスポーツムードたっぷりなのだが、それでいて前方視界が非常にいい。メーターナセル越しに前を覗き込むような姿勢を強要されるスポーツカーがかつては存在したものだが、そうしたモデルとは好対照、よい姿勢でしっかりとハンドルを握れば、前方には実に良好な視界が開ける。これならばドライビングが楽しくないわけがないと、動き出す前から確信する。 そして、実際に楽しい。まず試乗したのは200psエンジンを積む左ハンドルのMT車。この他、日本へ導入されたのは156psエンジンの右ハンドルAT車だ。考え方としては「200psはMT、156psはAT」というのがまずあり、MTはペダルの配置などから左ハンドルの方がいいという判断だったようだ。また、プジョーファンからも「左ハンドルで」という声が多かったとも訊く。そうした事情があることは理解できるが、右ハンドルのMTも用意して欲しかったというのが正直なところだ。 さて、200ps/MT車の走りは痛快そのものだった。出だしは鋭く、1700rpmからの最大トルクに乗れば、1.6Lエンジンとはとても思えないほどグイグイと加速して行く。このエンジンは、多くのプジョー&シトロエン車に搭載されていて評判のいいEP6DT型の進化バージョンだが、RCZに搭載するに当たって、洗練度を増したようだ。コーナリングは低重心であることの効果が歴然と感じられる。また、着座位置が308より前寄りであることもあり、まるでミッドシップカーのようなフィーリングでコーナーをクリアする。 156ps/AT車は運動性能で200psに見劣りするところはほとんどないと言っていい。逆に右ハンドルのATということで、スポーツドライビングを安心して楽しめると言える。この2モデルは装備もほぼ同じで、違うのはMT車が19インチホイールで、AT車が18インチホイールであることくらいだ。最高出力によるヒエラルキーは存在しないと考えた方がいい。 このRCZに乗ってみて、新時代のプジョーからは目が離せないと確信した。これからが実に楽しみだ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:永元秀和)