伊達政宗ゆかりの北限のお茶に、「日本茶文化の未来」を見つけた
茶舗と相良のお茶生産農家の協力
北限のお茶を育てるのは、容易ではない。まず、寒い。気候が合わないと、挿し樹も根ざしにくく、増やすことができない。お茶の樹の医学知識がなければ、太刀打ちできない。 そこで、矢部さんの紹介で、静岡の相良からお茶農家の方々が鹿島茶園を訪れ、より良いお茶を作るためのノウハウを伝授したという。 「お茶は土作りがまず大事です。その地域の特性、環境によって異なる土の香りは、そのままお茶の葉に乗ります。葉の香りはすなわち、土の香り。葉に宿る香気は生産地によって異なり、それがそれぞれの土地のお茶の魅力になります」 鹿島茶園の土は香りがよく、鉄分、リン酸、カリウム、窒素などが豊富で、可能性を秘めていると相良のお茶農家の方々も太鼓判を押してくれた。 山の上にあるため、水やりにも工夫が必要だ。 「お茶の樹って、園主が何回茶畑に足を運んでいるかちゃんとわかっているんですよね。お茶の樹はそれに応えているだけ」 必要なときに必要なケアをしてもらえなければ、それなりのものしかできないのだと、矢部さんはいう。手をかけてもらったお茶の樹は、長い時間をかけて自ら体質変化をしていく。雪が積もると寒さに負けるのではなく、葉と茎の間に熱を保つようになる。お茶の樹が自ら、自分を守る工夫をするようになるのだ。 「大切に育てられたお茶は、葉っぱの表情、葉相が違います。ペットボトルに使われるような大量生産のお茶は、農耕馬のように酷使され、生産性が衰えた茶畑はポイ捨てされます。でも、1年間しっかり休ませたお茶の樹の葉相は美しく、本当に旨いお茶になります」 相良のお茶農家の方々の協力もあって、鹿島茶園のお茶も、葉相の美しいお茶に育てることに成功した。 「茶摘み以降の茶の仕上げにも、もっともっと工夫や努力が必要です。あくなき挑戦です。愛情をかけてお茶を育てる生産農家がいて、正当に扱う問屋があって、その良さをきちんと伝えられる茶舗があって、それを理解して味わってくれる消費者がいる。この4つが揃っていたら、日本のお茶文化の衰退を防ぐことができるのだと思います」