東日本台風5年 阿武隈川遊水地取得27% 福島県鏡石、矢吹、玉川 集団移転希望4割
国は2028年度の遊水地完成を目指している。福島河川国道事務所の担当者は進捗(しんちょく)が遅れている認識はないとした上で「スケジュールを一方的には押し付けない」と住民意向を重視する姿勢を強調する。 鏡石、矢吹、玉川の3町村の首長は遊水地の維持管理に充てる協力金の拠出制度の創設、遊水地の利活用への主体的な関与などを国に求めている。木賊正男鏡石町長は「協力する住民の苦渋の思いをくみ、安心して新しい生活に踏み出せるような対応をしてほしい」と話している。 ■教訓生かし備え強化 被災地 台風19号の被災地ではこの5年間、教訓を生かした備えの強化が進んできた。 夏井川が決壊し、4人が亡くなったいわき市平下平窪地区では、住民による自主防災会が活動している。江尻光芳会長(72)は高齢者や障害者ら自力避難が困難な「避難行動要支援者」に加え、高齢独居世帯の把握も必要と考える。支援時に「不慣れな人が助けようとして誤ってけがをさせる恐れもある。支援者向けの保険制度があれば動きやすい」と指摘する。
阿武隈川の氾濫、支流の安達太良川の堤防決壊で7人が亡くなった本宮市でも町内会が自主防災組織を整えている。90%超が床上浸水した舘町地区の浜崎光則町内会長(74)は「災害を忘れないため、訓練や状況に応じた防災計画の見直しを続ける」と力を込める。 市街地が広範囲に浸水した伊達市梁川町の伝樋川では、川幅の拡幅広工事が続く。社屋1階が浸水した伊達鶏の生産・加工業伊達物産の清水建志社長(39)は「5年たっても工事が終わらない場所がある。一刻も早い対策を」と願った。 郡山市の郡山中央工業団地は阿武隈川の氾濫などで冠水。271社に約528億円の被害が出た。発酵食品を製造・販売する宝来屋本店は事務所や工場が1メートル浸水し、被害額は1億円以上に上った。被害の一部は国のグループ補助金で賄ったが、写真や書類などを集める申請手続きに煩雑さを感じた。柳沼真行専務・工場長(41)は「円滑に進むように簡略化してほしい」と求めた。
■県内各地で追悼 台風19号から5年となるのを前に11日、犠牲者への追悼が県内各地で行われた。 県庁と県警本部では職員らが黙とうをささげ、犠牲者の冥福を祈った。県災害対策課の佐久間止揚課長は「災害対策は日常的にできる。ハザードマップの確認など自助に努めてもらいたい」と県民に呼びかけた。 郡山市、南相馬市などでも職員らが黙とうをささげた。