【和紙を使っているって知ってた?】日本の伝統工芸を取り入れた国産腕時計
近年の国産時計で非常に存在感を増してきたのが、文字盤や外装に日本ならではの伝統工芸を取り入れたモデルだ。 具体的には琺瑯(ほうろう)、和紙、七宝、陶磁、螺鈿(らでん)、金箔、漆などを採用して、オリエンタルな雰囲気をことさらに強調したモデルが多くリリースされている。あるいはベルトに組み紐を用いたり、日本を代表するタンナーによる革ベルトを合わせたりするのも目立ち、なかには高度な技術を有した高名な伝統工芸士が製作に関わっている製品も見受けられる。これらは製造可能な本数も限られるため、市場でもすぐに売り切れてしまうことが珍しくない。 こうした日本の伝統工芸は、他国製にはない繊細な表現が海外でも高く評価されている。特に漆塗りの微妙な色合いの変化や、陶製文字盤のまろやかな白などは、熟練の職人が手がけることで唯一無二のタイムピースとなる。スイス製とはまた違った豪華な表現も可能で、国産時計の魅力を世界へ知らしめる意味合いも強い。 そこで、今回はこうした伝統工芸系のモデルにも力を入れているシチズン時計で商品企画に携わる担当者にお話をうかがった。 【文字盤に土佐和紙を用いたザ・シチズンの限定モデルを見る】
独自技術を最大限に生かす素材を模索して生まれた!
現在、ザ・シチズンでは、文字盤に和紙を採用し、従来にないデザイン表現を実現した魅力的なモデルを数多くラインナップしている。 では、“文字盤に和紙を用いる”というアイディアはどのようにして生まれたのか。
「1976年にシチズンが世界で初めてアナログ式光発電時計を発売して以来、エコ・ドライブ時計の開発にとって“光の透過率”と“美しさ”を兼ね備えた文字盤の開発は常に重要な課題であり、常にチャレンジを続けてきました。省電力技術の向上などムーヴメントの進化とともに透過率も改善され、デザインの自由度が広がり、エコ・ドライブ用文字盤の色調や文字盤の仕上げ加工技術など見栄えは格段に向上していったのです。 しかしそれでも、さらに美しい色は出せないかを日々模索しており、その解決策のひとつとして“和紙”に注目しました。和紙は古くから障子や行灯など、対象を覆いながら光を通す素材として用いられており、エコ・ドライブの求める文字盤の素材として良いのではと考えたのです。同時に、長くパートナーとしてご愛用いただくことを目指した“ザ・シチズン”では、“美しい白”文字盤の開発も模索しており、和紙文字盤で表現できる美しい白色が目的にフィットしたのです。これが2017年に初めて和紙文字盤を採用するにいたった経緯です。それ以降も、白以外の表現や箔を合わせたり、藍染めをした文字盤など、色調だけではなく和紙独特の風合いも含め、その魅力を引き出す表現を探求し続けていまに至ります。“伝統的な素材を使おう”というのがスタートであったわけではなく、あくまで美しい白を求めて行き着いたのが“和紙”だったのですが、結果として質感や風合い、さらには伝統と進化などその素材の製造過程がもつストーリーをも含めてエコ・ドライブ、そしてザ・シチズンにとって非常に大切な文字盤素材になったというわけです」