不条理演劇に堤真一ほか鉄壁の俳優陣が挑む。舞台『カラカラ天気と五人の紳士』
棺桶を抱えた5人の紳士。その間で、懸賞のハズレくじで当たった棺桶を有効活用するために誰かが死んで入らなければ、という突拍子もない議論が始まる。そこに、同じ懸賞で一等を当てた女性の二人組が通りかかる…。 絶対にありえないシチュエーションだけれど、横からそっとのぞき見しているうちに目が離せなくなる。そんな面白さを存分に味わえるのが、別役実の作品『カラカラ天気と五人の紳士』だ。 5人の紳士は、堤真一・溝端淳平・野間口徹・小手伸也・藤井隆という全くカラーの違う俳優陣。ともすれば停滞する空気が流れてしまう「登場人物がゴチャゴチャやり合う系」演劇だが、このメンバーならば、絶対にそんなことはないと思える顔ぶれだ。通りかかる女性陣二人も高田聖子、中谷さとみという実力派なので、余計に面白くなる未来しか見えない。 作家の別役実は、不条理演劇と呼ばれるジャンルを代表する脚本家。惜しくも2020年に亡くなっているが、数多くの名作を残している。 今回はそんな別役実作品を、演劇、映像両分野で活躍中の若手、加藤拓也が演出。加藤はラジオの構成作家として活動開始。20歳で「劇団た組」を立ち上げ、一気に注目の劇団に押し上げた新進気鋭の演出家であり脚本家だ。近年では劇団のみならず、テレビや外部の演劇作品、映画へと活動範囲を広げ、第10回市川森一脚本賞、第67回岸田國士戯曲賞、第30回読売演劇大賞演出家部門優秀賞といった数々の賞を受賞している。 最近の舞台では、2022年『ザ・ウェルキン』『もはやしずか』『ドードーが落下する』、2023年『いつぞやは』などがあり、昨年上演された『綿子はもつれる』は台湾での海外公演も行われた。 不思議な脚本に気鋭の演出家、そして個性豊かな出演者の組み合わせに期待は高まるばかり。「そんなバカな」と笑いながらも、自分の中にある後ろめたさや首筋をスッと冷たいものが流れたりする。そんなTHE・演劇的体験を堪能したい。 Text: Reiko Nakamura