ゴジラが“一線を越える”ってどういう意味なんでしょうねぇ。【みうらじゅんの映画チラシ放談】『ゴジラxコング 新たなる帝国』『ザ・タワー』
『ザ・タワー』
――2枚目のチラシは、フランスのSFスリラー『ザ・タワー』です。 みうら シャマラン的タイトルですが、何か関係はあるんですか? ――フランス映画なんで、シャマランではないと思います。でも、「建物の外に出ると物体がなくなる現象が発生」のコピー、確かにシャマラン感ありますね。 みうら シャマラン感プラスこのチラシには、ギラーミン感すら漂っていますね。ポスターやチラシの下に役者の顔写真を並べてるカンジがね。『タワーリング・インフェルノ』や『キング・コング』、『オリエント急行殺人事件』などのヤリ口です。 この場合、よく知らなくて申し訳ないんですが、チラシの下に並ぶ人たちは豪華キャストなんですか? ――いや、全然知らないですね。 みうら (笑)。豪華キャストじゃないのに並べるヤリ口は逆に新しいですよね。たぶん、このチラシをお作りになった方は、僕くらいの世代が引っかかるよう考えたに違いないんですよ。これは確実に『タワーリング・インフェルノ』のパロディだと思います。 『タワーリング・インフェルノ』では何人くらいの役者の写真が並んでましたか? ――ポール・ニューマンとスティーヴ・マックィーンを除くと9人いますね。 みうら 9人もいましたか。でも、主演のポール・ニューマンとスティーヴ・マックィーンに相当する人はこのチラシを見る限りいませんね。 ってことは、『ザ・タワー』、設計士と消防隊員がいない『タワーリング・インフェルノ』だってことになります。となると、火災ではなくこのタワー自体が生命体だということです。最近取り上げた『エレベーター・ゲーム』のときの予想と似てますけどね(笑)。 ――確かにちょっと雰囲気は似てるなとは思いました。 みうら ひょっとしてこの『ザ・タワー』、「ザ」が付くってことはバンド名でもあるんじゃないでしょうか? 下に写っている7人がそのバンドのメンバーだったりして。 ――バンド名ですか? みうら いや、パニックものじゃなく、このタワーに貸しスタジオがあってね、そこに出入りしていると思ったんです。 ――確かに左から3番目の人なんかはミュージシャンっぽいですね。 みうら 左から4人目は確実にシド・ヴィシャスを意識してるでしょ(笑)? たぶんパンクバンドですよ。 ――子どもを抱いてる人もいます。 みうら バンド内での恋愛もそりゃありますからねぇ。 “ザ・タワー”っていう名のバンドと、“ザ・タワー”っていう生命体。それがどう結び付くのかは観てのお楽しみです。それにチラシには団地の中とも書いてありますね。『ウルトラセブン』のニオイもしてきます。 ――フック星人の回ですね。 みうら そうです。夜中になるとこの団地タワーごと地下に潜るのかもしれません。チラシに書かれた「闇が現れる」ってのは、バンドの曲のタイトルでしょう。たぶん、メンバーは地獄から来たって設定ですから。 ――それはキッスか聖飢魔IIみたいなことですか? みうら そうなりますねぇ。……ごめんなさい、もう僕の妄想はここまでで限界です(笑)。 取材・文:村山章 (C)2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C)2022 - Unite - Les films du Worso 『ゴジラxコング 新たなる帝国』 上映中 ■プロフィールみうらじゅん 1958年生まれ。1980年に漫画家としてデビュー。イラストレーター、小説家、エッセイスト、ミュージシャン、仏像愛好家など様々な顔を持ち、“マイブーム”“ゆるキャラ”の名づけ親としても知られる。『マイ修行映画』(文藝春秋)、『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』『「ない仕事」の作り方』(ともに文春文庫)など著作も多数。