過去最低の出生率“0.72”…少子化が進む韓国で今、「結婚しない」「出産しない」若者が増えているワケ
筆者が韓国の合計特殊出生率に関する記事を始めて書いたのは2006年。2005年に「1.08」という数値を記録したため、韓国の深刻な少子化の実態を記したものだ。 【韓国の子どもが「将来なりたい職業」ランキング】 ちなみに韓国では、2005年に低出産・高齢化委員会が発足している。このときすでに日本より低い数値を記録していた韓国で、少子化が大きな問題であったことは言うまでもない。もちろんその後、さまざまな少子化対策が行われ、合計特殊出生率は上がったり下がったり変動していたが、2018年にはついに1を切ってしまい「0.98」に。 その後は下降の一途で、2023年にはついに「0.72」まで落ち込んだ。国家消滅の危機だと警鐘を鳴らす専門家も多く、それが現実になりつつあることを証明するかのように、2024年度就学予定の児童が1人もいない小学校が全国で157校もあった。
◆変化する結婚観
少子化を語る以前に、韓国ではそもそも“若者の結婚に対する意識”が大きく変化している。 韓国青少年政策研究院による「青少年価値観調査研究(2023)※1」によると、「必ず結婚せねばならない」と考える青少年の割合は2012年は73.2%であったのに対し、2023年は29.5%。特に女子学生は、2012年は63.1%だが、2023年には18.8%にまで減少している。結婚は義務ではなく選択するものと、大きな意識の変化があったことがうかがえる。 若者の結婚観の変化をさらに見てみよう。統計庁による「社会調査から見る青年の意識変化(2023)※2」によると、10年前は56.5%が「結婚に前向き」だと回答していたのに対し、2023年は36.4%まで減少。 さらに、「結婚はしないと考える理由」として、男女ともに、“結婚資金不足”を最も大きな理由にあげている。内訳は、男性が40.9%、女性が26.4%と、男性がより資金面での負担を感じていることがうかがえる。
◆お金がなくてはできない結婚
「お金がなくても結婚はできるじゃないか」という言い分は韓国ではあまり通用しない。 そもそも新婚生活に必須の新居を構えるのが大変だ。韓国の不動産価格の高騰ぶりはすさまじく、結婚適齢期の若者が両親の金銭的援助なしで、自力で新居を用意することはほぼ不可能なレベルだ。新居を用意するために借金することは珍しいことではない。 また、結婚するにあたり、新郎側が家を準備し、新婦側が家財道具を準備するという慣習がある。それゆえに新居を構えることに対する男性の負担は否応なく大きくなる。 それなら新婦側は新郎側よりは楽なのか、と思われるかもしれないが、そうはならない。結婚準備のために支払われる金額の差があまりに大きくなると、両家がもめて、結婚が破談になるというケースもあるし、その後の結婚生活に少なからず影響を与えることにもなる。 結婚準備、結婚生活にかかる費用、家事負担まで、全てを折半する「半々結婚」というスタイルも生まれた。結婚生活につきものの、あらゆる問題を解決すべく実践される結婚生活の在り方ではあるが、例えば、共働き夫婦の家事分担や子どもの教育費など、折半の線引きは難しく、「そこまでして結婚する意味は……?」という意見が少なくないことも事実である。