少女への性的暴行、公益通報して懲戒処分された公務員は語る 「通報者に報復した組織に厳罰を」
兵庫県の斎藤元彦知事を巡る疑惑告発文書問題で公益通報者保護制度の課題が浮き彫りになる中、京都市でも公益通報した後、市から懲戒処分を受けた男性職員(53)がいる。男性は「内部告発者への報復が繰り返されている」と嘆き、「通報者捜しをした組織に対し、厳しい罰則を設けないと何も変わらない。本当に身につまされる」と胸を痛めている。 【現物画像】そんな京都市が「通報者の秘密」について掲げるのは 確定した大阪高裁判決によると、当時、児童相談所に勤務していた男性は、民間の児童養護施設の施設長が入所中の少女に性的暴行を加えた疑いがあると児相が把握しながら、適切な対応を取っていないと疑問に感じ、2015年3月、市の公益通報の外部窓口である弁護士に通報した。 施設長は同年9月、少女にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反容疑で逮捕された。男性は児相の対応も検証されると思っていたが、期待した動きはなかった。対応を迫るには「証拠」が必要と考え、男性は児童の相談記録を基に、同年10月、2度目の通報を行った。 その15日後、市議(当時)に相談記録が流出したことが判明し、男性は市から他の児相職員とともに聴取を受けた。男性は市議への提供を否定したが、同年12月、相談記録の自宅への持ち出しなどが地方公務員法違反(守秘義務)に当たるとして、停職3日の懲戒処分を受けた。処分後に別部署に異動にもなった。 男性は相談記録の持ち出しは公益通報のために必要だったとして、処分取り消しを求めて市を提訴。判決は一、二審とも男性の訴えを認め、処分は違法と判断した。21年1月、最高裁が市の上告を退け、男性の勝訴が確定した。昨年5月には処分直後の異動も違法と認定され、市に男性への損害賠償を命じた別の訴訟の判決が確定した。 男性は自身の経験と兵庫県の問題には類似点があると考える。兵庫県では告発した職員の公用パソコンを県側が調べ、告発者を懲戒処分にしていた。男性も通報後、職場のパソコンにログインできなくなったという。男性は「報復するためのあら探しだろう。明らかな通報者捜しだった」と振り返る。 京都市は06年に多発した職員不祥事を契機に、不祥事抑止の柱として公益通報制度の充実を掲げたはずだったが、市幹部から議会で自身のことを「心ない職員」と指摘され、離れていった友人も多くいた。当時の取材に「二度と公益通報はしない」と答えたこともあった。 男性はその後、慣れない職場での仕事が続き、精神疾患を患った。「通報者へ報復を行った人や組織には厳罰を与えるべきで、このままでは声を上げる職員はいなくなる。死んで抗議しないと社会は動かないのか」